コヨミフェイル
015
[6/17]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
も取れてるし。
ていうか、言葉がストレートな分戦場ヶ原より辛辣だ。
「このシチュエーションで答えがそんな簡単であるはずがなかろうが。お前様の脳は何のためにあるんじゃ?いや、なかったか!すまん、すまん。忘れておったわ」
「きっと戦場ヶ原の真似をしているのだろうけれど、全然似てなくて無性に腹が立つな!」
言ってることも心なしか低レベルだし!
ガキか!見た目は高校生なのにな!
戦場ヶ原なら同じ趣旨のこと言うにしても、色んな言い回しや的確な言葉で僕をよりなぶることができよう。戦場ヶ原にすれば僕を言葉で詰ることなんて息をするようにやっているのだから、その分野に長けていて何等不思議ではないけれど、この忍は痛くも痒くもないどころかうざい。
「もうその腹立つ物真似はいいから、何なんだ?その漢字はどう読むんだ?」
「蛙じゃよ」
僕の言葉に不満そうな表情をしたが、すぐに引っ込めて――忍はドヤ顔でそう言った。
「蛙?何でそう読めるんだ?」
「………………………」
由来についての情報は輸入できていならしい。
「まあ、とにかく、黄泉蛙は『黄泉蝦』とか『黄泉蛤』なのじゃよ。そして、『黄泉蛙』を『読み替える』と、『よみえび』とか『よみはまぐり』といった具合になるのかの。吐き気がするほど語呂が悪いが、まあ黄泉蛙は蛙だけじゃなくて蝦や蛤の怪異じゃったというわけじゃ。じゃから存在が不安定で、身を要めざるを得ないのじゃろう。つくづく哀れな怪異よのう。駄洒落から生み出された所為で怪異としてその名を認知されにくく、存在が元より薄いにも拘わらず、名前を変質させられてアイデンティティまでもが中途半端にされたのじゃからな」
「…………そうかもな」
怪異もどきの身ではあるが、それでも怪異の不幸な境遇に同情できるほど親近感が沸くわけでも思い入れができたわけではなかった。
正真正銘の怪異になっていたときもあったが、あのときはいいことは何もなかったしな。いっそ無かったことにしたいくらいだ――忍との出会いを除いて。
「で、それがどうしたんだよ」
と、言った瞬間、忍がわざとらしく大きな身振りで呆れたようにため息をついた。
「問題大ありじゃろうが。防御に転じる、いや少しでも防御を意識すれば、蝦か蛤に変化してしまうのじゃからな。蝦や蛤が人間大の大きさになったと思えば、その殻の厚さもわかるじゃろう?『心渡』の刃は届かぬし、儂の牙も通さんときておる」
「ん?なんでだよ。忍の牙が牙の長さより厚さのある殻を通らないのはわかるとして、どんなに殻が厚くて硬くても『心渡』には関係ないじゃないのか?」
幼稚な表現になるが、すぱっとなんでも切れそうな感じなんだけど、『心渡』。
それこそこんにゃく以外何でも切れる大泥棒の子孫が持っている刀みたいに。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ