暁 〜小説投稿サイト〜
闇物語
コヨミフェイル
015
[5/17]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話

 「くそっ……」
 立ち上がって駆け出そうとする僕を忍は片手で制した。
 「同じことを繰り返すつもりか。馬鹿もここまで来れば一種の天才じゃな。言っておくが、お前は首を折られたのじゃぞ。そんな激痛を味わされる身になってからするんじゃな。いや、それとも今この場で味わされるか?」
 妙に口調が刺々しくなっていないか?
 背丈も僕の胸までしかなかったのが僕を少し越すぐらいまでになってるし、服装も僕の通っている直江津高校のセーラーブラウスにスカートだ。腰に届いている髪は垂らしてあるだけで、いじられていない。そして、前髪は直線だ。
 ていうか、戦場ヶ原だった。
 何故戦場ヶ原のイメージが反映されたんだ?確かに戦場ヶ原は僕の大切な人であるけれど、もちろん他にも大切な人はいる。千石や八九寺は背丈の問題で反映されないにしても羽川とか神原とか影縫さんとかでもよかっただろう。
 「いや、ただあのツンデレ娘がどんな気持ちでお前様をいたぶっていたのか気になってのう。成り切ってみたのじゃ」
 「へぇー…………じゃねえよ。何故今それが気になる。空気を読めよ!」
 曲がりなりにもシリアスパートじゃないのかよ。
 「言ったじゃろう。儂が唯一読めぬのは空気じゃと」
 「お前が言ったんじゃねえよ」
 戦場ヶ原だろ。
 行間紙背を読み、空気を読まず、凍らせる。人呼んで戦場ヶ原ひたぎである。
 「それはさておきじゃ」
 と、忍は本題に移った。
 「黄泉蛙の名は、存在が希薄であるが故に身を要めることとか、駄洒落とかから由来すると言ったが、それだけではないのじゃ。黄泉蛙という名には別の意味があったのじゃ」
 思い出したというのに儂の言うことなんか聞く耳も持たずに不様に一撃で撃沈されおったからに、このシスコンが、と忍。
 …………最後の言葉が霞んで聞こえなかったなあ。何て言ったのかな?
 ……まあ、いいっか。それよりも、
 「それは何なんだ?」
 「黄泉蛙は『よみかえる』とも呼ばれておったのじゃよ」
 「ん?」
 「じゃからー、黄泉蛙は『読み替える』なのじゃ。初めは『黄泉蛙』と呼ばれおったが、口伝えに広がるうちに変質してしまったのじゃろうな。じゃから地域によって名が違ったりするのじゃ」
 「ああ」
 確かにそう読めなくはない。
 「だけど、何をどう『読み替える』んだ?」
 「『蝦』と『蛤』はどう読むのかのう?」
 待ってましたとばからに得意顔で忍が言った。
 ていうか、その知識は忍野からの輸入品だし、今までそれを忘れていたのは忍であるのだ。得意顔になるのは間違ってるのではないか。
 「えびとはまぐりだろ」
 と、得意げになるわけでもなく、普通に答えた。鮮魚売場で時折見掛ける漢字である。
 「馬鹿かお前は」
 「急に辛辣だな!!」
 様
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ