コヨミフェイル
015
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鬼もどきだとか、人間もどきだとか言っているが、心のどこかで自分は人間であると思っていた。僕に身内を襲わせる――牙を掛けることで、僕と家族、いや人間に溝を作ることで、その勘違いを『正す』、『曲がった』ものを『正そ』うとしたのだろう。
ですから、と僕は続ける。
「対抗して、勘違いしたままいこうと思います」
目茶苦茶だけれど、勘違いし続けよう。
黒幕が誰だかわからないけれど、その目的もわからないけれど、知ったことではない。
精精もがかせてもらう。
気付いたけど、『勘違い』を読み替えると『間違|《かんちが》い』であるが、それも関係ないことだ。
僕は人間の吸血鬼もどきだ。
「まあ、精精頑張ることやな。この件については上に伝えといたるは、きな臭いしな。それとおどれの無害認定は健在やし、おどれを退治したりせえへんよ。あれは、余接の悪戯心やと思って、堪忍してやってな。ちゅうわけで、一件落着――いや、一見落着かな?まあ、どっちでもええか。余接のハーゲンダッツの件、あんじょうやっとくれやす」
そう言って影縫さんは斧乃木ちゃんが立てた指に乗った。
僕は、影縫さんがいつ斧乃木ちゃんからハーゲンダッツの件を聞いたのか疑問に思ったところで、僕は疑問とさえ思っていなかったが、何故影縫さんがここに駆け付けてこられたのか、気付いた。
そして、叡考塾に着いたときに、何故斧乃木ちゃんがいなかったのかもわかった。
それに『ゆわんこっちないわ』というのは斧乃木ちゃんの警告を指すのだから、あの時点から近くにいたと簡単にわかったはずだった。
そして、『鬼いちゃんにはご希望通り、この件の終止符を打ってもらう。その代わりにその時に生じた危険は鬼いちゃんの消滅を代償にしても排除させてもらうよ』というのは、斧乃木ちゃんがといわけではなく、影縫さんがということだったのだ。
統合すれば、つまり、斧乃木ちゃんが影縫さんに知らせてくれたのだ。そして、その知らせを受けて、影縫さんが来てくれたということだったのだ。
だから、
「…………はい、六つ買って上げますよ」
僕は、お礼に倍マシにした。勿論お財布のことは考えていない。
僕の言葉に斧乃木ちゃんがぴくり反応したのがわかった。
「ほな、さいなら」
それに、影縫さんが笑みを浮かべて答えた。
「じゃあね、鬼のお兄ちゃん、もといお兄ちゃん」
そう言って影縫さんを指に載せた斧乃木ちゃんは部屋を出ていった。
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