コヨミフェイル
015
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腕を支えにして、起き上がって、意識が回復するのを待っていると、その強制終了をした張本人の声が耳に入った。
「か、影縫さん」
「ん?なんや、ゆうことでもあんのけ?」
「ありがとうございました」
「はっ?」
なぜか嬉しそうにしていた影縫さんの表情が打って変わって疑問の色が浮かんでいた。
「助けて頂いてありがとうございました。影縫さんのおかげで僕は妹を化け物にせずに済みました――僕と同じ化け物にせずに済みました」
僕は、僕の腹を枕にしてすやすや寝ている火憐を一瞥して言った。
意識が混濁していて気付いていなかったが、意識が回復してくると、腹部に重さを感じ、見付けたのだった。
その気の抜けた姿が僕に安堵の胸を撫で下ろさせた。
「まあ、不死身の怪異が生まれるのを未然に防いだっちゅうだけなんやけどな。それよりも、問答無用に脳髄を潰されたことに何か言いたいことはあるんとちゃうんか?」
「いえ、まるでありません。斧乃木ちゃんはちゃんと事前に通告していましたから」
事前通告があったにも拘わらず、相手を責めるほど僕も馬鹿でも非常識人でも、人間の屑でもない。
それに消滅とさえ言われていたのだから、一度殺されただけで済んだことに文句などないのだ――何度も死ぬような目似合っている僕だからこそであるが。
「そやけど、いきなり、ぐちゃ、やで?」
「それでもです。文句なんてありません。逆に感謝しきれないほどに感謝してるんです」
「…………この件はうちの落ち度やから、糾弾はされど、感謝される覚えはないんやけどなあ。まあ、されて嬉しないことはないからその気持ちも受け取ったるけど」
と、本当に珍しく困り顔で言う影縫さん。
「まあ、代わりに、これだけゆうといたるわ――おどれは化けもんなんかやない、ちゅうことや」
「…………」
「おどれは確かに自分の妹に手――やないな、牙を掛けたけどな、仕方のないことやし、その方法は間違いやない、ただの失敗や。旧ハートアンダーブレードに代行させても結果はおんなじやし、その大層な刀も刃が届かへんかったんやから」
「慰めてくれてるんですか?」
「う、うちに限って慰めるゆうようなことするとおもっとおんのけ?」
心なしか僅かに頬を紅潮させているようにも見えるが気のせいだろう――吸血鬼化している今の僕の目に『気のせい』があるのか知らないが。
「ははっ、ですよね」
「キャラちゃうわ。それよりも、勘違いすんなや――おどれは化けもんやない」
二度も言うところなんて慰めているようにしか思えないが、勘違いだろう――そう、勘違い。
「…………今回の件は僕の勘違い、いや無意識のうちに自分は人間であるという勘違いしていた僕を『正す』回だったと思うんです」
そう、僕は口では自分を吸血
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