コヨミフェイル
015
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霊的エネルギーは底を尽きかけている。
尽きれば、それ以上はエナジードレインじゃない――吸血だ。
吸血すれば、その程度に関係なく、否応なく、その者は吸血鬼となり、眷属となる。
牙を離そうと思っても飢餓感に衝き動かされた吸血鬼の本能が僕の命令を疎外する。
どうすればいい?!このままでは、火憐ちゃんが!
と、飢餓感に侵されて本能に理性を溶かされながら朦朧とする意識の中で思った瞬間だった。
「ゆわんこっちゃないなぁ、鬼のお兄やん。まあ、ゆったんはうちとちゃうけどな」
影縫さんの声が降ってきた。
やっとのことで、目だけを動かして、上を見た――いや、頭上を見た。
影縫さんが頭上にいたからだ。
僕の脳天の上で僕の顔を覗き込むように平然としゃがみ込んでいた。
乗っているというにも拘わらず、その重さが感じられなかった。そこにあるはずの重さが感じられなかった。
が、それに思考を省いているときでもなかった。
「か、かへういはん!」
略すと、「影縫さん!」である。
「え?何ゆうてんかわからへん」
「はふへへくははい!」
略すと、「助けてください」である。
「えぇっ?やから、何ゆうてんかわからへんゆうてるやろ」
「意地悪しないで、助けてあげてよ、お姉ちゃん。忍お姉さんが今にも僕に襲い掛かりそうな形相で僕を睨んでるんだよ」
とことこと僕のそばにやってきた斧乃木ちゃんが言った。
「そりゃ、大変やな。ガンバやで、それとも応援したろうか?」
……コントでもしているのか?
危機的状態だというのにこの二人はなぜ平然としている?
これが、強者の余裕というやつなのだろうか?
そうだとしても、弱者の僕には余裕が一切ないのである。
「かへういはん!!」
「ああ、もう、わかったわかったぁって。せっかちやのう。ゆうとくけどな、おどれを今助けたって、まだスズメバチの妹に怪異が残っておるやろ?綺麗さっぱり吸い尽くしたと同時に――殺して――助けたるわ、とゆうてる間に吸い付くしたみたいやな」
「ほえ?――がぁっ!」
影縫さんの耳を疑う言葉に「ほえ」何て男子高校生が言っても全然蕩れないほうけた声を漏らした瞬間だった。
後頭部に強烈な衝撃を知覚した、いや、する間もなく意識を潰された。
「う……あ……」
そして、次に目にしたものは薄汚れて、穴が目立つ天井だった。
視界ははっきりしていたが、パソコンを強制終了してから立ち上げなおした時のように、後遺症として僕の意識は朦朧としていた。
「大丈夫か、お前様よ」
そんな視界に忍の顔が入ってきた。
「ああ」
心配そうな表情だったが、一瞬それが誰なのかわからなかった。
「おお、もう再生したか!不公平な程の再生力やな、鬼のお兄やん」
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