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闇物語
コヨミフェイル
015
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いや、止められだろう。
 ただ、何度でも起き上がるだろうということだけのことである。
 「なら、どうするんだ?」
 「鬼いちゃんにはご希望通り、この件の終止符を打ってもらう。その代わりにその時に生じた危険は鬼いちゃんの消滅を代償にしても排除させてもらうよ」
 殺害じゃなく――消滅、存在の滅却。
 不死の死。
 「わかった、取引成立だ」
 だが、関係ない。
 死んだって構わない。
 それが僕に科せられた罰ならば。
 火憐が無事ならば。
 …………僕ってやはりシスコン?
 まあ、どっちでもいいさ。
 「頑張ってね、鬼いちゃん」
 「お前様よ…………」
 さばさばした斧乃木ちゃんとは打って変わって、僕の心の内なぞ手に取るようにわかるパートナーは悲壮な顔付きだった。
 ここに来るときはさっさと片付くと思っていたんだが、完全に宛てが外れたな、と人事のように思いながら、忍から目を離した。
 「じゃあ、行ってくるぜ」
 と、言って僕はゆっくりと忍の前に踏み出た。
 僕の闘気を察知したのか、忍を睨んでいた火憐がその無色の双眸を僕に向けた。
 そのまま歩調を変えず、僕は歩を進めた。
 足を踏み出すごとにさらに心が澄み渡って、頭が虚無に呑まれていくのがわかった。
 僕をじっと見詰めたまま仁王立ちで待ち構えていた火憐と僕との距離が五メートル………………………四メートル………………………三メートル………………………二メートル…………一メートル半、になったその時だった。
 火憐は身体を伏せるようにして、地面に張り付くようにして、しゃがむと、伸ばした長い足で刈り取るように足払いを繰り出してきた。
 その技の切れは目を見張るものだった。
 足払いというよりかは、足切りだ。足首から下を切断できそうな感じ。
 だが、僕には、伏せた瞬間は見失ったが、それ以降の一部始終がはっきりと見えていた。だからこそ、目を見張れるのだし、解説ができるのだ。
 僕は前転するように小さく跳ぶと、そのまま伏せている火憐の脳天に踵を振り下ろした――勿論かなり手加減して。
 だが、結果的にそれは当たらなかった。
 足払いをかわされたと知覚した瞬間から既に回避行動に移っていたらしく、踵は髪を掠めるものの、空を切った。
 火憐は、間一髪のところで横に跳ぶようにして、体勢を立て直すためか、二メートルも離れたところに退避した――ことを目で捉えていた僕は、地面に着地するが早いか、火憐ちゃんに片方の手の平を突き出していた。
 それを火憐は、よけることで精一杯だったのか、見ていなかった。というか、僕すら視界に収めていなかった。
 だから、これから起きることに驚いて、防御の意思を抱くことなく、僕に捕らえられてしまうのは仕方がないことだろう。
 僕の突き出した手の平と火憐
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