コヨミフェイル
015
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んで、スズ姉の彼氏の家族を襲って、更にはスズ姉自身に憑いて、それを鬼いちゃんが退治しようとしている――このすべてがたまたまで説明できることではない。まるで、全員が鬼いちゃんのお膳立てのためにキャスティングされたみたいだ。第三者、いや黒幕の影を意識せざるを得ない。いるのなら、きっとスズ姉の改造をしたのはその黒幕だろうね」
黒幕――と言われてふと脳裏を過ぎる人物があったが、何の根拠もないし、雰囲気から連想されたものだと結論づけて否定した。
「僕がこの件に終止符を打つことが、黒幕の仕組んだことだからその通りにするのは危険だ、ということか?」
「そうだね。回避できるというのにも拘わらず、わざわざ黒幕の思い通りに動いてやることはない」
「だろうな………………だろうけれど、やはりこれは僕が片を付けるべきなんだ。それで僕が危殆に瀕しても、それは僕が受けるべき罰なんだ」
「それは思い違いにも程がある、思い上がりも甚だしいというものだよ、鬼いちゃん。鬼いちゃんが予防策を誤ったことが原因かもしれない――けれど、少なくともこの件において鬼いちゃんの対応には誤りはない。だから、鬼いちゃんにはこの件を片付ける義務はあれど、受ける罰はない。それに、もしこの一連の事件が鬼いちゃんの責任ならば、自分の危険を顧みずに片を付けることが償いだと思っているなら、それは思い上がりだよ――それで、償えると思うなよ――僕はキメ顔でそう言った」
「……思ってないよ、斧乃木ちゃん。贖罪のつもりなんてない。僕はただ罰を受けたいんだよ。だから、僕に片を付けさせてくれ」
罰を受けさせてくれ。
自傷願望?
なのかもしれないがどうでもいい。
「それが、本音だね、鬼いちゃん。自分では気付いていないだろうけれど、鬼いちゃんからただならぬ気配を感じるよ――おどろおどろしい気配を感じるよ」
そうだろうか、僕は至って平気である。
怒りに燃えているわけでもない、殺意に衝き動かされているわけでもない。
ただ、何故か罰を受けたいだけなのである。
頭は真っ白で、心は水を打ったように静かである。
平たく静かだった――平静だった。
…………いや、これがおかしいのか。
妹が何者かによって弄ばれているというのに何も感じないのは不感症とかのレベルじゃない。
おかしい。
こんな状態が、というよりかは、僕自信がおかしいのか。
「…………確かに、変な感じだ。全然怒りが沸いてこない。もしかしたら怒りが頂点を突破して、臨界点を突き破って、メルトダウンして心を穿ち、いずこかに消えたのかもな。不思議と心が穏やかだよ」
「そうなると、更に君を止めなければならない理由が増えたのだけど、きっと鬼いちゃんのことだから、無意味だろうね。今の君だったら殺しても、止まらないだろうね」
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