暁 〜小説投稿サイト〜
闇物語
コヨミフェイル
015
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 僕は廃墟にいる。元は叡考塾と呼ばれたそれなりに名のあった学習塾の抜け殻だ。駅前に進出してきた大手学習塾に押されて敢なく潰れたらしい。周りには立入禁止と書かれた柵が張り巡らされているが、柵の金網に所々穴が空いていて用を成していない。
 中は酷いとしか言いようのない有様で、この建物は四階建てなのだが、どの階の教室も椅子や机が散乱していたり、蛍光灯が割れていたり、床のリノリウムもあちこち剥がれていたりと、荒れ放題だった。そんな廃墟の四階の一つの教室は忍野が寝床にしていた机を並べた簡易ベッドがある。
 僕はその簡易ベッドの端に腰掛けていて、右に妖刀『心渡』を立て掛けている。左には忍が僕に引っ付くようにして腰掛けていた。手持ち無沙汰に穴の開いた天井の向こうに広がる星のない夜空を見上げながら足をプラプラと前後に揺らしている。
 つまり、忍と二人きりである。先に行っていると言った斧乃木ちゃんの姿はない。先に行っていると言った斧乃木ちゃんがここに向かったと解釈したのだが、僕の勝手な思い込みだったのだろうか。それともここにいるが、忍も影の外にいるから姿を表さないだけなのか、まあ、どちらにせよ、見えるところに斧乃木ちゃんはおらず、この場には僕と忍しかいないことだけは明白である。
 勿論この状況に胸を躍らせはしない。一人のときは、すなわち、影の中にいる忍と二人きりなのだから、ほとんどの時を忍と二人きりでいる僕は、そんなことで得に嬉しくはならない。いつものことである。
 ただいつもと違っているのは忍の容姿だ。
 着ているのはワンピースではなく、着物である。それも闇夜に紛れるような黒い着物である。まさにナイトウォーカーといった感じだ。
 背丈も少し高くなっていて平らだった胸も心なしか膨らんでいる。
 まあ、つまり、忍に血を吸わせて成長させたのだ。言わずもがなのことであるが、少し成長して雰囲気の違う忍を眺めて楽しむためではない。
 これが作戦なのである。
 忍は元最凶最悪の怪異、怪異の王、鉄血にして熱血にして冷血の吸血鬼、キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード――だった。今はほぼすべてのスキルをなくし、僕の影に繋がれている。
 そして、それと同時に存在力を失っている。
 ほぼ人間に成り下がった忍の怪異としての力、つまりは存在力は皆無に等しかった。
 だが、そんな忍の力を復活させる方法がある。
 実に簡単で、僕の血を与えれば、全盛期の姿に戻れる。
 ただそうなれば、僕が掛け値無しの吸血鬼になる。
 最強の吸血鬼の眷属になる。
 だけど、そんなことはまっぴらごめんだし、今はそれを必要としていない。必要なのは月火のと同等の存在力。
 つまりは今の忍の姿は月火の存在力と等しくなるように調節された結果なのである。二十数人にしか知られていないだ
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