意味と狂人の伝説――収相におけるナエーズ――
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の見ました。ペニェフの子供たちがその死体の横で、横木にぶら下がって遊んでるんすよ。自分、それ見て、何かもう……何かもう、耐えられなくって……」
ラプサーラは奥歯を噛みしめた。
「何だろう……。自分、語彙貧弱なんでこういうの、うまく言えないけど……なんかな、死は死なんだなって。どんな死でも、それが惨いとか残酷とか、そういうのは全然なくって、ただの死でしかないんだって。だから、これで束の間でも平和が手に入るとか、協定が守られるとか、そういうのも別になくて、あの六人の死には結局意味なんかなくって……人間らしさとか文化とか、ここはそういうの以前の場所なんだって……」
ざわめきが起きた。
道に民間人が群がり、何かを凝視している。
藁と縄で簀巻きにされた人物が、藁束から頭を出した状態で運ばれてきた。兵士たちがそれを三人の魔術師と、やって来たデルレイの足許に投げ出した。
「交渉材料が来たな」
アーヴは話をやめた。ラプサーラは膝立ちになり、何が起きるのか見る。
デルレイが藁越しに、簀巻きにされた中年男の腹の辺りを軍靴で蹴った。男は激しく咳きこみ始めた。不自由な姿勢のまま腹筋で身を起こし、のたうち、血を吐いた。血と一緒に長い髪を吐いた。喉に絡まっているようで、苦しげに咳きこみながら髪を吐きだすのをやめない。
ベリルは男の前に立ち、冷酷な目で、呪詛をかけた相手を見た。彼が吐き出すベリルの白い髪は、血で真っ赤に染まっている。ベリルはしゃがみ、顔を近付けた。
「リデルの鏃の筆頭、カルムだな?」
男は充血した目でベリルを睨みつけた。その顔に唾を吐く。
「やめとけよ」
ベリルは小瓶を取り出し、男の唾を採取した。
「唾だって呪いの道具に使えるんだぜ。血や髪ほど強くないけどな」
一際大きな何かを喉に詰まらせ、男が目を見開く。顔が紫色に変色していき、えづき、ついにその何かを吐き出した。
血で染まった髪の束。その中に、一糸纏わぬ姿の小人達がいる。小人達はわらわらと、男の口から吐き出され続け、彼を取り囲むと、きぃきぃ喚き始めた。
「おお、出てきた出てきた。てめぇがこれまで殺してきたペニェフ達だぜ」
その数は、二十、三十……ラプサーラは吐き気がしてきて、数えるのをやめる。ようやく吐くのをやめた男が言葉を発した。
「何をするつもりだ」
「二、三質問させてもらうだけだ。痛い目見たくなかったら正直に答えるこったな」
「俺を拷問するつもりか!? 貴様、緑の界の魔術師なんだってな。緑の界を統べる神マールは慈悲の神だと聞くけどな!」
「だからって俺が慈悲深くある必要はないんだぜ?」
デルレイの合図を受け、二人の兵士が簀巻きの男を持ち上げ、奥の天幕へ運んで行く。
「ここからは見ない方がいいっす」
アーヴに言われ、ラプサーラは場を離れた
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