第百九十五話 長篠の合戦その六
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「よいな!」
「はっ!」
「では!」
「柵まで辿り着けばじゃ!」
その時にというのだ。
「後はな」
「はい、柵を倒し」
「そうして」
「中に入るぞ」
織田家の陣の中にだ、彼はそれをひたすら目指していた。
そうしてだった、その中で。
ひたすら進みだ、遂にだった。
柵に届くところまで来た、だが。
柵だけではなかった、前には狭いとはいえ川もあった。猿飛がその川を見てそのうえでこう幸村に対して言った。
「殿、あれでは」
「うむ、馬でもな」
「川に綺麗に沿って柵を置いておりますし」
「手が届かぬ」
「ではここは」
「縄をかけよ!」
柵、それにだ。
「それで引き倒せ!」よいな!」
「はっ!」
こうしてだった、騎馬隊の者達は縄を出してそれをだった。
柵にかけて幸村の言葉通り引き倒そうとする、だが。
その彼等にだ、今度はだった。
柵から長槍をが出て来た、それでだった。
柵を倒そうとする武田の兵達を寄せ付けない、それを見てだった。
幸村は歯噛みしてだ、十勇士達に言った。
「一点だけを開ける!よいな!」
「我等で、ですな」
「長槍を切りそのうえで」
「そうじゃ、仕掛ける」
その長槍とものともせずにというのだ。
「よいな」
「はい、それでは」
「これより」
十勇士達も主の言葉に応えてだ、そしてだった。
一丸となり柵の一点をこじ開けようとする、しかしそこに。
信長がだ、鉄砲隊にこう命じた。
「あの者達を集中的に撃て!」
「あれは真田幸村!」
「そして十勇士達!」
「あの者達を撃ちじゃ!」
そして、というのだ。
「討ち取れぬまでも止めよ!」
「殿、討ち取れぬと仰いますか」
その信長に竹中が問う。
「あの者達は」
「尋常な者達ではない」
それで、とだ。信長は竹中に答えた。
「だからな」
「それで、ですか」
「うむ、鉄砲でもな」
例えどれだけ撃とうとも、というのだ。
「倒せぬわ」
「左様ですか」
「あの者達は天下の傑物揃いじゃ、その程度で死ぬ者達ではない」
「しかしですか」
「そうじゃ、動きは止められる」
その斉射でというのだ。
「だからな
「畏まりました、それでは」
「撃つのじゃ」
また言う信長だった。
「ここはな」
「さすれば」
こうしてだった、鉄砲隊は幸村を集中的に撃った。信長の読み通りその一斉射撃でだった。幸村と十勇士達は。
前に進めなかった、これには十勇士達も歯噛みした。
「くっ、これだけ撃たれては」
「前に進めぬ」
「鉄砲に当たらぬまでも」
「これでは」
「跳ぼうにもな」
幸村は上も見た、だがその上にもだった。
矢が降り注いでだ、どうしてもだった。
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