第百九十五話 長篠の合戦その五
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その勢いはこの時も炎が迫る様だ、三河口の時と同じく。
織田家の兵達は怖気つく、しかし。
将達が必死に叱咤し奮い立たせてだ、そのうえでだった。
鉄砲隊を構えさせ弓矢も長槍も用意される、そして。
間合いに来た、その時にだった。信長は采配を振り下ろした。
「撃て!」
「撃て!」
命が復唱されてだ、それを受けて。
一列に並べられた鉄砲隊 の鉄砲が火を噴く、その鉄砲からだった。
轟音が轟き弾が撃たれる、その一撃目で。
騎馬隊のうち何人かが倒れる、だがそれで怯む彼等ではなかった。
幸村は両手にそれぞれ槍を持ってだ、兵達に言った。
「今じゃ!」
「そうじゃ、今じゃ!」
「一撃目が放たれた今じゃ!」
武田の兵達も幸村に応えそしてだった。
そのまま突進する、弾が込められ次の鉄砲が放たれる前にだった。
柵を倒し織田の陣中に雪崩れ込もうとしていた、それでだった。
彼等は突っ込む、しかし。
その彼等にだ、さらにだった。
鉄砲が放たれた、何とだ。
もう鉄砲隊が銃を構えていたのだ、その二?目を見てだ。さしもの幸村も眉を顰めさせそのうえで言った。
「何と、早い」
「そうじゃな、次が放たれるにしてはな」
「早いですな」
幸村は山懸のその言葉に応えた。
「今は十秒で来ました」
「それ位じゃったな」
「鉄砲はどれだけ早く込めても二十秒」
「それが何故十秒じゃ」
「これはどういうことでござろうか」
眉を顰めさせて言う幸村だった。
「一体」
「わからぬ、しかしな」
「ここで怯んではなりませぬな」
「止まってはいかん」
その突進を、という山懸だった。
「このまま進みじゃ」
「柵を倒し」
「そしてじゃ」
そのうえで、というのだ。
「斬り込まねばな」
「御館様の仰る通り」
「そうじゃ、行くぞ」
「それでは」
「柵じゃ」
山懸は強い声で言う。
「その柵を倒してじゃ」
「そのうえで、ですな」
「斬り崩す」
まさに、というのだ。
「そうしようぞ」
「ですな、留まっていては」
「撃たれるだけじゃ」
その鉄砲に、というのだ。
「だから行こうぞ」
「さすれば」
「殿、我等がです」
「周りを固めます」
十勇士達は今幸村の周りにいた。
「ですからここは」
「安心して前をお進み下さい」
「そしてです」
「そのうえで」
「うむ、織田に勝つ」
確かな声でだ、幸村も十勇士に応える。そうしてだった。
幸村は十勇士、そして山懸と共に早く来た鉄砲をものともせず突き進み続ける。鉄砲に加えて矢も来たがそれでもだった。
「駆けよ!」
「駆けてですな!」
「そうして!」
「矢が降り注ぐ場を抜けよ!」
そうせよと言うのだ。
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