第151話
[1/4]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「あ・・ああ・・・・」
もう呻き声のような声しか漏れなかった。
それほどまでに目の前の絶望が制理の精神を蝕んでいく。
泣き叫んで大声をあげて子供のように泣き喚きたい衝動に駆られる。
ティンダロスの猟犬たちはそれが分かっているのか、一気に襲う事はなくゆっくりと歩み寄る。
まるで死が刻々と近づくように。
あっさりとは殺さない。
這い寄る絶望を堪能しながら恐怖に支配されて死んでいく。
「あははは・・・・ははは・・・」
もう笑うしかできない。
ここで泣き叫ばなかったのは未だに人間の理性が少しでも残っていたからだろう。
しかし、逃げようとしない。
そもそも逃げる意味もない。
これだけの猟犬に出くわせば死んだも同然だからだ。
およそ、二メートル。
この短い距離をゆっくりと制理に向かって歩み寄るティンダロスの猟犬たちだったが。
そこで制理の後ろから光が照らされる。
それに続いて何度もクラクションが鳴り響く。
突然やってきた車が制理とティンダロスの猟犬の間に綺麗に割り込んでいく。
その際に一番先頭にいたティンダロスの猟犬は車にぶつかり吹っ飛ぶ。
運転席の窓が開くと、そこには黒い髪の女性が乗っていた。
「早く乗るじゃん!!」
「え・・・え・・・」
あまりの急な展開に制理がついていけていない。
女性は焦るような声でもう一度言う。
「早く!!」
急かされる声を聞いて制理はようやく立ち上がり、後部ドアを開けて中に入る。
制理が後部ドアを閉める前に、女性は来た道を引き返す様に猛スピードでその場を去って行く。
後部ドアを閉めて後ろを確認しようとしたが止める。
もし追って来ている所を見たら、今度こそ発狂してしまうだろう。
助手席には白衣を着た女性が乗っていた。
友人だろうか?、と制理は適当に考える。
何より人に会えて一緒にいるという事が制理の精神を少しずつだが落ち着かせる。
そして、あの現実がとてつもない非現実である事を再認識すると呼吸が荒くなっていく。
「それでたまたま近くを通ったらあの場面に出くわしたんだけど。」
「あ、ありがとう・・ございます。」
呼吸を落ち着かせながら制理はお礼を言う。
そこでようやく運転している女性の顔をはっきりと確認する。
その顔に見覚えがあった。
何度か体育の女性教師だ。
学校で美人なのにいつも緑色のジャージを着ている残念な美人だ、という噂になっている先生だ。
その女性の方も制理に見覚えがあるのかこう言う。
「あれ、小萌先生が担当しているクラスの子じゃん。」
「は、はい。
その、あなた達は?」
「ウチは黄泉川愛穂。
何度か学校で会っているじゃん。」
「私は芳川桔梗。
元研究者で愛穂の友達。」
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ