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とある星の力を使いし者
第151話
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助手席の女性もそれに便乗して自己紹介をする。

「吹寄制理です。
 助けていただいてありがとうございます。」

「子供があんな状況に陥っているのを見過ごす訳にはいかないじゃん。」

「それより聞きたいのだけれど、あの化け物は何?
 私、生物学である程度の構造とか知っているけどあんなの図鑑でも見た事ないわよ。」

「そんなにひどいの?」

「見ない方が良かったと後悔するくらいね。」

さっきのティンダロスの猟犬を思い出したのか桔梗は少しだけ口元を押える。
それを見た愛穂はあの桔梗が吐き気を催すほどのものなのか、と少しゾッとした。
制理を助けた時、愛穂はティンダロスの猟犬たちとは逆の方だったので見る事はなかった。
だが、逆に桔梗はしっかりと視界に入ってしまった。
四足獣であるということ以外は、犬には似ても似つかない身体。
口から出る「太く曲がりくねっていて鋭く伸びた注射針のような」長い舌と全身が「原形質ににいているが酵素を持たない青みがかった脳漿」のような粘液に覆われた、まるで何も食べていないような痩せこけたような身体。
あんな冒涜的な生物などこの地球上に存在する訳がない。
いや、存在してはいけない。

「さて、これからどうするじゃん。
 恭介は一向に見つからないし。」

「麻生を捜しているのですか?」

愛穂から恭介という名前を聞いて制理は反応する。

「まぁ、ちょっとした事情で今捜しててね。
 そういう吹寄も恭介を捜しているの?」

「あいつにちょっと尋ねたい事があって。」

後部ミラーで制理の表情を確かめる。
少し思いつめたような、聞く事を恐れているようなそんな感じがした。

「ともかく、あんな化け物がいる以上吹寄を一人にさせる事はできないじゃん。
 しばらくはウチ達と一緒に」

その瞬間だった。
愛穂が運転しているフロントガラスに降り注ぐ雨を取り除くワイパーの先端から強烈な存在感を感じた。
その存在感を制理は知っている。
一度知れば忘れられる訳がない。
そう、あの猟犬が出てくる前兆だ。
ワイパーの先端から黒い霧と共にティンダロスの猟犬が出現する。
その出現に桔梗は息を呑み、愛穂は視界が防がれたのと冒涜的な存在を目の前にして咄嗟にハンドルを切ってしまう。
そのまま近くの街灯に勢いよく直撃してしまう。
あまりの衝撃にエアバックが作動する。
シートベルトをしていなかった制理は前の席に身体を打ち付けてしまう、
エアバッグのおかげかさほど怪我もなく前を見る。
ティンダロスの猟犬は今はいない。
何とかエアバックをどかし、エンジンをかけるが全く反応しない。

「吹寄!
 大丈夫かじゃん?」

「だ、大丈夫です。
 頭を打ちましたけど、何とか。」


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