3、本当、大好きよ!!
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ミヤコの一日が過ぎるのはあっと言う間だ。
マナーの勉強や、政治・経済。国の歴史・成り立ち。そして、ダンス。このダンスこそ、ミヤコの一番の難敵だった。
「そう、そこで右足を半歩前に出して」
「は、半歩……?」
いきなり半歩とか指示出されても……。こ、これくらい?
「っ!?」
「ああっ!ごめんなさい!!」
半歩どころか一歩弱くらい前に出してしまったらしい。ミヤコの足が講師の足を踏む。
とっさに体重を移動させて直ぐに退かすも、踏んだ事実はなくならない。
「……ミヤコ様、今日はこの辺にしましょう」
「うぅ……はい……。ありがとうございました」
講師から少し離れて、一礼。
では、また次のレッスンに、とちょっと足を引きずって出て行く講師の様子にミヤコは申し訳なく思う。
どうしても同じところで躓いてしまう。
先生、こんな下手くそに付き合わせてごめんなさい。足、ちゃんと冷やしてね。
何度か踏んでしまった先生の足を気にしつつ、ミヤコは疲れた表情のまま、用意されたお茶セットに手を伸ばした。
「あ、これ美味しい」
思わず零れた呟き。ミヤコの顔に自然と笑みが浮かぶ。
「失敗してもそうやって、笑って差し上げれば大丈夫ですよ」
空いたカップに紅茶を注ぎながらマリーが告げる。
「そうは言ってもね、マリー。あんなに何度も足を踏まれちゃ、誤魔化されてはくれないわよ」
「ミヤコ様はダンスが一番苦手でございますからね」
苦手だから、やらない。とはねのけられれば良いのだが、そうもいかない。ダンスは身に付けなければいけない社交的必須スキルだ。
「ミヤコ様、気分転換に白夜に会いに行かれては?」
「いいの?」
窺う様にマリーを見れば、仕方ないと言うように肩を竦められた。
マリーの言う白夜とは、ミヤコの愛馬である。
「ミヤコ様は白夜と駆けている時が一番楽しそうですから」
「マリー!!」
いいの? 本当に?
嬉しさに顔がにやけてしまう。
「但し、一時間です。それ以上は私が王様に叱られてしまいますので」
マリーが指を一本立てて、言い聞かせる。
「大丈夫!! 分かってるわ!!」
居ても立ってもいられず、ミヤコはスカートの裾を掴んで着替えるために部屋を飛び出す。
「ミヤコ様!! 走ってはいけませっ……」
「マリー、また後でね!! 本当、大好きよ!!」
「そっ、そう言うのは恋しいと思う殿方に言って下さいっ!!」
マリーの言葉に笑って、ミヤコはまた走り出した。
頬に当たる風が心地良い。どこまでも走って行きたい、と願う程に。
でも。
私はセリア国の第二王女だから。
きっと嫁いでしまえば、こうやって白夜に乗って駆けることさえ出来なくなってしまうのだろう。
悲しい、と言うよ
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