『八雲』橙がやってくる!
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ーーー!!」
そう、こいつの言っている『藍様』『紫様』の存在である。永遠亭という一大勢力からアタックをかけているというのに使いはこの橙だけ。不可解だ。こんな奴を一人で永遠亭に乗り込ませるなんて――――。
(余裕? いや、それとも何か別の理由でもあるのか?)
突っかかってくる橙を眺めながらてゐはため息を付いた。どちらにせよ、こいつには聞きたいことが沢山ある。
「うああああ! 食らえッ『牙』!!」
回転する爪で直接てゐに攻撃するつもりだろう。しかし因幡てゐは動かない。
「気を付けな、そこ落とし穴あるウサよ」
ズボォッ!!
「にゃあああああ!?」
橙はてゐに飛びかかろうとして踏み切った地面が急に抜け、驚きの悲鳴を上げる。
「く、くっそおお! 卑怯だぞ! この兎詐欺!」
落とし穴の途中で橙は持ち前の身体能力で何とか体勢を立て直し、両手足をつっかえ棒の様にして何とか止まることが出来た。
「卑怯? 詐欺? ははは、そう言われると詐欺師冥利に尽きるウサね。というかあんたはいっつもそうウサ。やる気だけで空回り。頭は悪いし攻撃も単調。かといって力があると言えばそうでもない。だからあんたはいつまでも『八雲』と呼ばれないのさ」
てゐはニヤニヤと笑みを浮かべて穴をのぞき込んで言った。
「まぁまぁ、そんな不憫なあんたに同情できないわけでも無いし? 目的が何なのか、言うって約束するならそこから引っ張りあげてもいいウサ」
必死で穴に落ちまいとする橙にドスドスと突き刺さる言葉を並べ立てていく。
(あぁ〜、快感ウサねぇ〜。弱い者いじめ楽しい〜)
と、てゐがうふふと笑みを漏らしていると。
「・・・・・・」
「ん? 何か言ったかウサ? 聞こえないなぁ、もっと大きな声で・・・・・・」
「うええええええん!! 藍しゃまあああああ、紫しゃまああああああ! 助けてぇえええ!」
「うぇえッ!? ちょ、待って、泣くなよ! 落ち着くウサ! い、今助けてあげるから!」
「うわあああああん!! びえええええええん!」
「あぁ! もうッ! あんたは調子狂っちゃうねぇッ!」
数分後、泣きわめく橙をてゐはわたわたと仲間の兎たちと一緒に引き上げた。
* * *
(焦った、橙の泣きであの『二人』が来たらどうしようかと思ったウサけど・・・・・・どうやら来ないみたいね)
荒い息を吐きながらてゐは縄で縛った橙を見る。
「・・・・・・ぐすっ、えぐっ」
「・・・・・・」
弱い者いじめが好きとは言っても相手が泣いてしまうとやはり罪悪感が凄い。「お、泣く? 泣いちゃうの?」と言っておきながら本当に泣いたら「お、おい・・・・・・え、ちょ。泣くなよ先生来るだろ・・・・・・」って言う小学生の気持ちだ。恥ずかしい。
「で、結局目的は・
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