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鎧虫戦記-バグレイダース-
第010話 苦渋のセンゴク
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く花弁を広げた赤いバラだった。

「そんなことないよ。とっても素敵」

ハトはほんわかとバラを眺めながら言った。

「痛かったり、苦しかったりする毒だって沢山あるのに
 このバラさんはみんなが苦しまない毒を選んだの。
 同じ死でも辛くない方が‥‥‥‥‥‥私はいいかな」

彼女は花弁をつまみながらそう続けた。

「‥‥‥‥‥ふふっ、そうね。私もそう思う」

カツコもハトと同じように指に咲いたバラの花弁をつまんだ。

「‥‥‥痛みは確かに辛い」

セキレイはつぶやいた。

「でも、痛みは生きている証だ。その痛みを奪うのは
 命を奪うことに等しいんじゃないのか?」

彼は最近学んだ教訓を生かしてこう言った。
それに彼女たちはしばらく反論できずにいた。

「‥‥‥‥だったらセキレイちゃんは、痛みしかない手術を受けたかったの?」

その言葉にセキレイはギクッとした。

「あなたが″EVOL手術″を受けるとき、麻酔を受けたはずよ。
 その時の麻酔もきっと痛覚を麻痺させる、痛みを奪うでしょうね?」

彼は少しずつ体を小さくしていった。

「治すには薬だけではダメな場合がある。だから人間は手術の道を選んだ。
 その手術に置いて痛みは障害なの。生きる上での支障でしかないの。
 確かに、あなたが受けたのは人体の改造手術かもしれない。
 それでも、あなたはその時、平気で命を捨てたのよ」

 バタッ!!

彼はついに倒れた。

「‥‥‥‥‥‥おれが言えることじゃなかったな」

セキレイは顔を押さえたまま言った。

「何にせよ、毒は毒。薬に名を変えてもその恐ろしさは変わらない。
 大事なのは、それをいかに使うかよ。そうすればどんな毒でも薬になる」

カツコは指の変身を解いた。

「それに確かに痛みも大事よ?」

 ギュッ!

彼女は上半身だけを起こしたセキレイの右の頬をつねった。

「いででででででッ!何すんだよ!!」

セキレイは声を上げた。

「‥‥‥‥‥‥‥でないと生を実感できないものね?」

カツコは彼の頬から手を離しながらこう付け加えた。
代わりにハトの手がセキレイの左の頬に伸びた。

「やっぱり痛みは大事だね♪」

 きゅっ

ハトは彼の頬を軽くつまんだ。

「‥‥‥‥‥そーだな」

 きゅっ

セキレイはハトのやわらかい頬をつまみ返した。


 ザバザバザバザバザバザバッ!!


ジョンが遠くから床を泳いで来た。
彼とカイエンは少しの間、偵察に行ったのである。
彼はその勢いのまま床から上がって、そのまま立ち上がった。

「何やってんだ?セキレイ、ハトちゃん」

二人は互いの頬をつまんだまま彼の
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