八十一 復讐者
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後の大木に背中を強か打つ。
いきなりの反撃に動揺する彼の視線の先で、【千鳥】を穿たれたはずのナルトが静かに佇んでいた。
だがその脇腹からは、確かに血が滴り落ちていた。
「御無事ですか、ナルトくん!?」
「……途中で無意識に攻撃を外したな、サスケ…」
ナルトの身を案じる白をよそに、彼は淡々と己の身体を見下ろした。
当初の狙いは左胸だったのだろうが、身体を突く間際に無理矢理サスケは術を方向転換したのだ。
腕をずらした際に勢いも若干削がれたものの、それでもナルトの脇腹を抉った【千鳥】。
抉られた箇所からじわじわと広がる血に白が痛ましげに顔を顰める。
しかしながら平然と佇んだまま、ナルトは眼を細めてサスケを見た。その声音は寸前とは一転している。
それはまるで、この世の生きとし生きるもの全てが畏縮してしまうほどの冷酷なものだった。
「―――何処を狙っている。心臓は此処だ」
冷やかな視線。いつものナルトとは違う物言いに、白がビクリと身を震わせた。
ナルトの心配以上に白の全身を襲ったのは、畏怖の念。
同様にナルトからの視線を一身に受けているサスケが感じたのは、大いなる戦慄だった。
「今のお前などイタチの足下にも及ばない」
ナルトから発する威圧感を受けながらもサスケは辛うじて身を起こした。途端、己の身体が瞬く間に潰れる錯覚に陥って、混乱する頭を激しく振る。
ナルトらしからぬ挑発に疑問を抱く白に反して、何の疑いも無くサスケは反発した。
「…それじゃあ、なんであんたは俺とイタチを引き合わせたっ!?」
今でも鮮明に思いだせる。
ずっと一族の裏切り者として追い続けてきた兄との再会の時を。真実を知った瞬間を。和解した一時を。
それもこれも今現在自分の前に立ちはだかっているナルトがいなければ成し得なかったモノだ。
「てめぇはどうして!イタチと俺を和解させたんだッ!?」
「……察しが悪いな…」
脇腹から止め処なく滴る血を止めもせず、ナルトは冷やかにサスケを見下ろした。
「イタチを殺す為だ」
「――――どういう意味だ」
野生の勘だろうか。先ほどから全く止まらない全身の震えはサスケの足を立たせようとはしなかった。
立ち上がろうとする意志に反して動かぬ身体。自然と震える両足がサスケを戦闘態勢に持ち込むまいと揺れ動く。
「イタチは忍びとして模範的な人間だった。隙が無く、己の心を殺す事に長けている。だからこそイタチの唯一の弱点である―――」
ナルトは一度口を閉ざす。そうして次に話す間際、彼は秘かに唇を噛み締めたようだった。
しかしながらナルトはくっと口角を吊り上げる事でサスケの眼を欺いた。
「サスケ………お前が必要だったんだ」
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