四話「とも」
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との出会いと別れ、それらが俺の記憶を呼び覚まそうとする。
「う、うぅ……!?」
「し、シン!?」
急に頭を抱えだして苦しむ彼に智代は戸惑うも、そのうなりは時期に止み、徐々に苦しみが薄れていくシンは、目を見開き、智代を見つめた。
「智代……」
「シン……大丈夫か?」
「ああ……」
シンは、両手を頭からは離して智代を見つめた。そして、風に前髪を揺らされながら、彼はその一言を智代へ告白した。
「……一瞬だが、岡崎明也の記憶が過った」
「……!?」
「俺が……お前とあのアパートで同居していたこと、ともとの出会いと別れ、河南子や鷹文のことも……」
「シン……」
それは喜ばしいことなのだろうか、しかし、完全に記憶を取り戻したこととなれば、それは違った。
「だが、まだ明也だということが実感できない……」
「シン、いいんだ……」
智代は微笑みながら目頭を熱くした。
*
その夜、俺たちは貸してもらった部屋で一夜を過ごすことにした。ともは俺たちと一緒に寝たがっており、途中まで彼女を寝かしつけてから、こっそりと自室へ運んでいった。
正直、俺は智代と二人きりに寝床でいたかったからだ。
「シン……いや、明也? 来てくれ……」
「智代……」
互いの肌を、体を重ね合わせた俺たちは、長い夜を過ごした。
早朝には、ベッドの上に互いの脱ぎ捨てた衣類が散乱しており、布団の中には互いに身を寄せ合う二人の男女がいたのだ……
「シン……」
「智代……」
目覚めに口づけをかわそうとしたのだが、それは突如舞い込んだドアの激しいノックに妨げられてしまった。
「シンさん!? 智代さん!?」
施設長の女性だった。
「は、はい……!」
急いで衣類を着整える二人は一呼吸してドアを開けた。
「二人とも、ともちゃんを見ませんでした!?」
「いえ……どうかしたんですか?」
嫌な予感を察知した俺は表情を曇らせた。
「ともに……何かあったんですか!?」
俺の問いに施設長はある一通の手紙を俺に差し出した。その文通を広げると、そこには俺と智代にとって衝撃の内容がつづられていた。
『シンこと、明也へ。前回は智代の邪魔で決着がつかないまま結果ドローとなったが、このまま引き下がるわけにはいかない。フェアじゃないことはわかっているけど、ともちゃんを人質にさせてもらったよ? 返してほしければ、僕を倒して、ともちゃんを救い出してみなよ? 懐いているんだろ? あの子、お前に……』
――春原……!
春原の仕業だということは一目でわかった。そして、奴のいきそうな場所もこの文通に書かれていた。前回戦ったあの場所だ。
「シン……」
不安な表情を浮かべる智代に、俺は振り向いた。
「智代、お前はここに居ろ? これは俺と奴との問題だ……」
俺は突っ走って施設を後にした。
場
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