四話「とも」
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と、智代も後を押す。
「……」
シンも、黙ったまま仕方がないということで、片手でともを軽々と持ち上げた。
「うわ……」
最初はやや驚いた表情だが、初めての経験でやや笑んでいるともに、シンはやや微笑むと、次に彼女の両足を自分の両肩へかけさた。
「どうだ? とも、肩車の眺めは?」
一緒に微笑む智代を見て、ともも少しほど安心を得た。
「とも、掴まってろ?」
と、シンは肩にまたがらせたともと共に丘の周りを歩いた。最初は少し恥ずかしく思ったが、それでも次第とシンに対して明也との懐かしさがこみあげていった。
――シンおじちゃんの匂い……パパの匂いにそっくりだ
そんな、懐かしさに包まれたともは、自然と居心地を感じだす。時間がたつにつれて、ともは次第とシンに懐き始めた。
「ふふ、ともはシンのことが気に入ったみたいだな?」
そのあと、笑いながらシンと遊んだともは疲れ切って、シンの膝の上で寝てしまった。
「ああ……」
シンは、自分の膝の上で眠る幼気な少女の前髪をそっと撫でた。
「お前に、全ての記憶が戻れさえすれば……」
そうなれば、自信をもってシンは明也となり、とものことも思い出してくれるはずだ。
「だが……俺は違う。今の俺は……岡崎明也の皮をかぶった、化け物さ」
「シン……」
しかし、彼は強化人間であることは変わりない。そんな苦悩する彼の横顔を、智代は見守ることしかできない。
「シン!」
思い切った智代は、立ち上がると、シンの前へ出てこう告げた。
「……もう一度、結婚しないか?」
「は……?」
「お前が明也だったころ、最後にお前と結婚の約束をしたんだ。でも、それは叶わずしてお前は行ってしまった……だから、こうして巡り合えた今度こそ、あの時交わした約束を果たしたいんだ」
「……」
シンは黙った。それは、記憶のない彼にとっては混乱することでもあるが、しかし確かな記憶を探れば、何かをやり遂げたいという思念が込みあがってくる。
――俺が、果たしたいこと……
すると、シンもともを抱えて別の場所へ寝かせると、彼も静かに立ち上がり、智代の両肩に自分の両手を添える。
「俺が、果たさなくてはならないこと……」
そして、一瞬のフラッシュバックが彼の頭をよぎった。
『智代、結婚しよう……』
「ッ……!?」
そして、その残像は次々に蘇っていく。
『いいじゃないか? 記念日となる日を増やしていこう……それは全部私たちが二人で過ごした記念だ』
『取り柄がないことなんてない。お前は私を幸せにできる。それがお前の取り柄だ……』
『……明也、私に嘘をつくな。お前がどんな逆境にあろうと、私は味方だ……一人で抱え込むな、いつだって私たちは一緒だ……』
『パパー!』
『ウッス!』
『明也兄ちゃん!』
数々の人の顔が俺を見つめ、そしてとも
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