四話「とも」
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与していることだけは確かだ……」
「菅原も、その会社の連中による実験で俺みたいに?」
「詳細はわからないにせよ、今後は注意せねばならないな……?」
「……」
シンは、腕を組んでしばしの間を置いた後、再び口を開けた。
「智代……?」
それは、とてもじゃないがいつもの彼とは違ってとても暗い表情をしていた。
「どうした?」
浮かない彼の顔に、智代は心配げに尋ねる。
「俺……帰るよ?」
「シン、何を言っているんだ?」
「……あんな醜い姿を見せちまったんだ。それに、その『菅原』が、また俺を狙いに来るかもしれない。そん時にともや施設の人たちが巻き込まれたりしたら……」
「しかし! お前は、それでいいのか!?」
智代は、感情的になってソファーから立ちあがり、そんなシンを見る。
「だが……本当にこれ以上俺がここに居たって何の意味もないだろ?」
「ともが……ともが、お前を誤解しているんだぞ? 世にならざる者だと思われているのだぞ!? それでいいのか!?」
「どう言い訳をすればいいんだ……!」
と、今度はシンが少し怒って返す。
「私が……私が、何とかする! だから、お前はもう少しここに居てくれ?」
「……」
だが、いつまでも表情を曇らせるばかりのシン。そんな彼を智代は悲しい目で見つめると、そっと彼の首へ両手を回した。
「智代……?」
次の瞬間、智代は思いっきり心を胸へ抱き寄せた。彼女のぬくもりとほのかな香りが伝わってくる。
「お前は化け物じゃない。とももきっとそれをわかってくれる。だから、今はあの子を信じてくれ?」
「……」
翌日、智代は再びともに会うため、彼女の自室を尋ねた。
しかし、彼女はずっと部屋へ閉じこもっている。
「とも、私だ。開けておくれ?」
「……」
「……とも、これから私と一緒にピクニックへ行かないか? ともの大好きなケーキも用意してある。さ、気分を変えて部屋から出てきてくれないか? 私も、せっかくともに会いに来たのに、ともがこんなんでは私も寂しい。なぁ? 一緒にピクニックへ行こう?」
「……」
すると、しばらくして扉がゆっくりと開いて中からともが出てきた。
「とも……」
智代は、彼女を連れて外へ連れ出した。ケーキの入ったバスケットを下げて彼女と手をつなぎながら、森の道を歩いた。
「……なぁ? とも」
「……?」
「ともは……シンおじさんのことが嫌い、か?」
「……」
ともは少し黙ったが、少し間を置いてから彼女は答えた。
「嫌いじゃ……ないけど」
「とも? シンおじさんは、ああ見えて『正義の味方』なんだぞ?」
智代は、ニカっと笑んでともにそう答えた。
「おじちゃんが……?」
「そうだ! いいか……」
智代はこれまでに起こった出来事を手に汗握る内容に所々作り替えてともにシン
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