四話「とも」
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、何故俺の急所を狙わない?」
そう、戦っているうちにわかったが奴は俺の急所を外して攻撃していた。最初から殺す気はなかったかのように思えた。
「へへ……ダチを殺すほど俺だって鬼じゃないさ」
「じゃあ……なぜ?」
「俺は……俺は!」
春原は、大粒の涙を乗せてこう叫んだ。
「……俺も、智代のことが好きだったんだ!」
「……」
「……覚えているか? 学生のころから俺たちは一緒になって智代をからかってただろ? こんな不器用な俺だから、こういうことしか彼女に表現できなかったんだ。それなのに、お前は俺とは違って智代と親密になって、果てに彼女はお前を選んだ。俺じゃなくて……だから、智代を手に入れたお前が羨ましくて、憎かった……けど、お前は俺のたった一人のダチだ。優柔不断だよな? 俺って……」
「春原……教えてくれ?」
俺はそんな彼がなぜこのような人生を歩んだのかを問う。
「なぜ、お前はこんな体になる道を選んだんだ?」
「……へへ、カッコ悪い話さ? 仕事をクビにされて、行き場を失った俺は、大金と引き換えに人体実験をする企業の噂を耳にして、疑いもせずに奴らの元へ行っちまったのよ? そんでもって、このありさまさ……それからというもの鬼守のいうことを聞き続けたら、元の体に直してやるっていうから、こんな化け物染みたからだなんておさらばして、芽衣のいる実家へ帰りたかった……!」
そう、吐血を続けながらも、春原は自分の最期だとしり、力の限り俺にこう言い残した。
「頼む……鬼守の研究所を、ぶっ潰してくれ……もう、俺たちのような犠牲者を出さないために……!」
「春原……」
「生きて帰って来いよ? お前じゃなきゃ……智代は幸せにできないんだから……」
だが、その瞬間。数発の銃弾が森の中に響いた。そして、春原は息を引き取っていた……
「!?」
引き続き、銃声は次々に起こり、いくつもの銃弾が俺に降り注いだ。しかし、俺にとって銃弾の群れなどスローすぎて余裕だ。
目の前には機関銃を抱えた数人の兵士がこちらへ銃口を向けていた。彼らは俺に対して現状の攻撃は無効と知ったのか、銃撃をやめてそそくさと撤退していった。
「春原……」
変身を解いた俺は春原の元へ再び歩み寄る。数発の銃声がトドメとなり、春原はこうして息を引き取った……しかし。
「ぱ、パパ……」
木の陰から、ふら付きながらともが歩み出てきた。それも、腹部から血を流して……
「と、ともっ……!?」
俺は彼女の元へ駆け寄ると、倒れそうなその体を抱きとめた。先ほどの銃撃に巻き込まれてしまったのだ。
ともは、急所を撃たれていた。おそらく……手遅れかもしれない。
「パパ……」
「とも……?」
「パパ……なんだよね? シンおじさん」
「とも……」
銃弾で腹部を負傷しながらも、ともは続けた。
「最初会
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