意味と狂人の伝説――収相におけるナエーズ――
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」
ベリルが目を瞠る。その顔から血の気が引いた。
「答えろ。踏まなければ問題ない。そうだな」
「はい、ですが――」
「ですが、何だ」
「踏まないように歩くとなると、相当注意深く歩かなければ……しかも一人ずつ歩かなければ不可能です。隊長、二万の人間がですよ? まさか一列になって? 冗談じゃないっすよ」
「無論、冗談ではない」
魔術師が左手を固く握りしめるのを、ラプサーラは見た。
「リデルの鏃の一党はナエーズ中心部を拠点にしている。これを突破しさえすれば、以降はグロズナの影響力の薄いナエーズ北部に入る。どのみち引き返す事はできん」
デルレイはミューモットを呼んだ。
「貴様もここまで来て、協力せんとは言わんな、魔術師」
「いいだろう」
「ベリル、引き続き先頭に立て。ミューモット、馬に跨れ。人と馬にとって安全な道を後続に示せ」
ベリルが身震いする。ミューモットが前に出て、彼の馬に跨った。ラプサーラは眩暈を感じながら、その場に踏ん張った。
隠れる場所もない平原を。二万の人々が。一列で進む。
峠から見下ろした矢の嵐が、否応なく思い出される。足が震え、止まらなかった。
ベリルが、握りしめた左手を額にかざす。
彼は歩き出した。右手から、魔術の光の粒がこぼれ、後続に道を示す。ミューモットが馬に乗り、その後ろに続いた。
白昼、死の一列縦隊はこうして始まった。
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