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Lirica(リリカ)
意味と狂人の伝説――収相におけるナエーズ――
―3―
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ルの言う事が正しいのだと、頭ではわかっていた。

 占星符を捲れば意味がわかるだろうか?
 星が意味を与えてくれるだろうか? 神が?
 意味があり、人が死ぬのか。あるいは死に意味などなく、全ては運でしかなくて、意味を求める方が馬鹿げているのか? ラプサーラは一晩うなされる。

 夜が明けても行軍は開始されず、救出部隊を待った。ベリルはそばにいたが、話しかけてはこなかった。謝らなければならないとわかっていた。しかし、話しかける事はおろか、彼の顔を直視する事さえできなかった。兄が死んだのに生きているベリルが憎くて仕方なかった。彼が親切な人物である事はわかっている。彼が死ねばよかったわけでもないと思っている。
 それでもどうにもならなかった。死にゆく兄に対して無力だった、ベリルの事が憎かった。
 移動開始を待つ間、ミューモットが食べられる草と食べられない草を教えてくれた。これは良い気晴らしになった。
「あのぎざぎざの葉っぱについてる黄色い実は何?」
「あれはやめておけ。食えん事はないが、一定の割合で毒のあるよく似た奴が混じっている。素人にはまず見分けがつかん」
「あんたは何の玄人なんだい?」
 そばで聞いていたベリルが口を挟むが、ミューモットは歪んだ笑みを浮かべるばかりだった。ベリルは肩を竦めるだけで追究はしなかった。
 ミューモットはマントの下に、鞘のないダガーをちらつかせていた。その刃も柄も黒く塗られており、一目で暗殺用だとわかる。彼が何者なのか、ラプサーラは知りたいとも思わなかった。願いは一刻も早く目的地に着く事だけだった。
 日が高くなるまで待つが、魔術師二人を投入した救出部隊はついぞ戻って来なかった。食料の欠乏もあり、この場に留まる事はできなかった。
 救出部隊を待たずして、デルレイは行軍を開始する。

 四日目、今度は先行する偵察部隊が先頭集団に戻って来ない事態が発生した。デルレイはやはり、偵察が戻るのを待たず前進を決断した。
 ひどい胸騒ぎがした。星図が何かを囁いているから、今すぐそれを広げて意味を読み取らなければならないという強迫観念に駆られた。ミューモットとベリルはラプサーラの近くにいて、何かを囁きあっている。
 やがてベリルが馬に跨り、列の先頭に走って行った。間もなく行軍は、森の中で止まった。
「どうしたって言うの」
 ミューモットは「さあな」ととぼけて答えない。ラプサーラは占星符が入った荷袋を胸に抱き、列の先頭に走った。軽んじられるのも、何も知らずに歩かされるのも、我慢ならなかった。
「ベリル」
 ようやく彼の名を呼べた。
「ベリル!」
 白髪の魔術師は兵士に囲まれて、デルレイと共にいた。兵士を押しのけて現れたラプサーラから、ベリルは緊張して顔を背けた。
「何だい」
 ラプサーラは彼のぎこ
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