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Lirica(リリカ)
意味と狂人の伝説――収相におけるナエーズ――
―3―
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すぐにそれを隠した。
「セルセト人の魔術師だ。名はミューモット。カルプセスで助けてくれた」
 助けて。じゃあ、兄さんの事は? 助けてくれたの?
「お前、星占(ほしうら)だな」
 ベリルとデルレイが目を丸くした。ベリルが尋ねる。
「あんた、何で――」
 伝令が人々を押しのけて馬を走らせる、その叫び声が聞こえた。
「何事だ!」
 伝令は馬から下りず答えた。
「後続の集団が敵弓射部隊の襲撃を受けています!」
 その報告はラプサーラの心に衝撃を与えた。ロロノイの生死に関するベリルの情報より、遥かに直接的で、わかりやすい衝撃だった。
 伝令は各地点に設置されており、最後尾から前方へ、前方から最後尾へと伝達される。
 デルレイは直ちに前進を開始した。山の中の坂道を、石や木の根を跨いで急ぐ。
 行軍が滞る瞬間があった。
 それは峠の、左手側の木々がなくなり、視界が開ける箇所で起きた。
 ラプサーラも思わずその場所で足を止めた。
 蟻のように蠢き逃げ惑う、人間の姿が見えた。先頭集団がとうに通り過ぎてきた道にいた、後部集団に違いなかった。
 左右の支道から、矢の雨が降り注ぐ。
 道には既に人の骸が積み重なり、行く手を塞がれた後続の人々が、為す術なく倒れていく。
 混乱に陥り、敵のいない支道に迷いこんではぐれていく人々も見えた。そっちじゃない、と叫びたかったけれど、渇ききった喉からは、声は出なかった。
「急いでください! 立ち止まらないで!」
 セルセト兵に肩を突かれ、ラプサーラは歩きだした。目を前に戻せば、また森と道しか見えなくなる。殺戮を隠す緑の幕。
 視界は木々に遮られ、じき何も見えなくなった。

 ※

 木兵が佇む街を、セルセト兵の目を避けながら二人の子供は歩いた。ミハルの家にたどり着いた時にはすっかり日が暮れていた。ミハルは震える手で家の戸を開いた。そのまま奥の台所へと歩いて行き、震えだしたかと思うと、その場で立ったまま涙を流し始めた。
「おじさん……おじさん……」
 泣いているミハルの姿を見るのは辛く、悲しみが伝播して、ペシュミンの目にも涙が滲んだ。
 突如、何かに気付いたようにミハルが走り出した。彼は台所の奥の戸を開け、あっ、と声をあげた。ペシュミンも後を追った。戸の向こうはちょっとした庭だった。一斉に飛びあがった蠅の羽音が耳を打ち、むせ返る悪臭に息を詰まらせた。
 大きな塊が、庭の隅に転がっている。暗くて見えなかったが、ミハルがそれに縋りつくと、尚も蠅が飛びあがった。
「ノエ、ノエ」
 ミハルは大きな塊を揺さぶっている。ペシュミンも庭に出て、一歩ずつ歩み寄った。塊は、黒い犬の死骸だった。舌をだらりと地面に垂らし、地面を覆う草は、血で濡れている。
「ひどいよ――ねえ――こんなの――」
 ミハルは
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