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「じゃあいいだろ」
「うぐっ」
「一応昔色々あったが、まぁそれは戦場での話だしな」
確かに任務は今のところ入っていないし、お嬢様も今日は金曜集会とやらで風間ファミリーと一緒だ。
それに現在の拠点としている自宅に帰っても、特にやることがあるわけでもない。
もちろん過去にあった戦いに遺恨があるわけでもない。
「で、どうするんだ?」
「……はぁ、わかりました。話だけは聞きましょう」
「ふっ、お前も少しは物わかりがよくなったじゃねぇか猟犬」
「勘違いするな。今日は本当にたまたま任務がなかっただけの話。それに引き受けるとはまだ誰も言っていません」
「はいはい、んで頼み事だが……これだ」
「……これは」
一冊の分厚い本だった。
表紙には『人と人とのコミュニケーション』と書かれている。
「あの、なんですかこれ」
「それを読めば人と人との円滑なコミュニケーション能力が培われ、空気が読めるやつになれるらしいぞ」
「馬鹿にしているのですか!?」
「ちげーよ、お前にやるわけじゃねぇよ。話は最後まで聞きな」
「ち、違うのですか。それなら、いいのです」
少しホッとする。
じつはつい先日お嬢様に、マルさんはもう少し愛想を良くした方がいいぞ。フフン、ま、自分は出来ているがな!と言われたばかりなのだ。
もっと言えばここ最近はもっぱらそれについて悩んでいたところである。
「……女王蜂、私はコミュニケーション能力に欠けている部分があるのでしょうか」
「何突然聞いてきてんだよ。……まぁ猟犬も少しはこれを読んだ方がいいのかもしれないが、今回はお前じゃなく、棚透ってやつにだ」
「棚……どこかで」
「同じクラスのやつだよ。今日、ヒゲに頼まれたんだ。そいつを棚に渡してくれってよ」
ヒゲ、2ーS担任の宇佐見巨人の事ですか。
「それが、頼みごとですか?」
「ああ、それだけだ」
「これを渡すだけでいいんですか?」
「ああ、渡すだけだ」
「そんな事に、ドイツ軍の猟犬に頼み事を?」
私とてプライドがある。
こんなふざけた、というか一般人でも出来るような事を何故やらねばならないのか。
「お断りします」
「報酬が九鬼の畜産部が総力をあげて作った超高級卵を1パックだったとしてもか」
「………」
≠ ≠
まったく、女王蜂にも舐められた物です。
猟犬が卵1パックで動くとでも思っているのか。
確かに、九鬼の作った卵は通の中でも一口食べれば天国を覗く事が出来る、と絶賛されるほどに美味だと聞いている。
そうだとしても、卵一パックは頂けなかった。
「卵3パック前払い。さすがは九鬼といったところでしょ
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