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マルギッテ・エーベルバッハは極めて優秀な軍人であった。
ドイツで生まれ、幼い頃から軍人になるための訓練をこなし、確かな実力をつけ戦場に立ち猟犬と呼ばれるようにまでなった。
あらゆる任務を確実にこなし、上官であるフランク・フリードリヒ中将からも絶大な信頼を置かれている。
そして今、マルギッテは新たなる任務を遂行していた。
≠ ≠
クリスティアーネ・フリードリヒ、もといクリスお嬢様の護衛の任務についてすでに一ヶ月が経過していた。
私、マルギッテ・エーベルバッハはクリスお嬢様の転校と同時に此処、川神学園2ーSのクラスに編入した。
この一ヶ月でお嬢様も風間ファミリーというお仲間をお作りになったようで、とても楽しく過ごしておられる。
お嬢様の笑顔を見るだけで心が安らぐようだ。
風間ファミリーの事も調査済みであり、安心してお嬢様を任せられると私は判断していた。
中将はお嬢様に言いよる男がいないか心配していらっしゃったが、あのファミリーの男達なら問題ないだろうと思う。
私といえば、21歳というこの年齢で高等学校に入ったわけだが初めはやはり少なからず抵抗があった。
だが、これは任務なのだ。嫌だ、などと言う理由はない。
それにこの学園は武神の川神百代を初めとした、たくさんの強者が集まっているため、それほど退屈な空間ではなかった。
青春というには遅すぎるが、こんな日常も悪くないと考え始めていた。
そんな日の放課後。
「おい猟犬」
凛々しい声が私を呼びとめる。
教室から出ようとした私の足は止まり、目はその声の主を捉えた。
「何ですか女王蜂。今から私は帰宅するところなのですが」
私より低めの身長にスラリとした身体。
ショートカットの茶髪が彼女の凛々しい顔をなでている。
忍足あずみ。
かつて女王蜂と呼ばれ、戦場で恐れられた傭兵の一人である。
実際何度か戦場で出会っているため面識がある。
今は同じクラスの生徒だが。
そんな彼女が放課後の教室で私に話しかけてきた。
「お前に頼みがある」
「……」
「何だよ」
少し驚いてしまった。
彼女が私に対してものを頼む事など予想外すぎる。
「い、いえ、少し驚いてしまっただけです」
「……別に好きで頼むんじゃねぇよ。これからあたいは英雄様のところへ全速力で向かわなきゃならねぇんだ。ホントはハゲあたりに頼もうと思ってたんだけどな。見たところ教室に残ってるのお前くらいだったからよ」
なるほど。
確かに今の彼女は以前の傭兵の女王蜂とは違い、主人に忠実なメイドだ。
だが私は少し反論する。
「頼まれる理由は分かった。が、私だって忙しいということを理解しなさい」
「あン?なんか任務でもあんのかよ」
「……いや」
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