第70話 雨の降ってる日には傘をさそう
[4/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
見るからに施錠されてる感満々に見えた。
早い話が閉じ込められたと言った所だろう。
「もしかして、これってアレ? 良くスパイ映画とかである脱走しなきゃいけないパターンとか? でも参ったなぁ、私片目の蛇さんじゃないし、スーツが似合う7番目の人でもないから脱走の手引きとか知らないし―――」
などと一人で意味不明な言葉をぶつぶつ言い出す若干9歳の女の子。一体どこにそんな知識が備わっていたのか至極気になる所だがこの際気にしないでおこう。
どうせ本人は今の状況をまるで分かってないのだから。
ふと、下半身に妙な違和感を感じた。誰もが感じる良くある現象と言う奴だ。
まぁ、とどつまり―――
「か……厠……厠行きたい!」
生理現象であった。生憎この部屋にはトイレなどは備わっておらず、このままでは部屋の中に薄汚れた青春の1ページを飾る羽目になってしまう。
「ま、不味い不味い不味いぃぃぃ! このままだと本当に不味いぃぃぃ! 私もう今年で9歳なのに人様の部屋で汚い青春の1ページとか飾りたくないよぉぉ! でも我慢も出来ないし! えぇい、こうなったらままよぉ!」
祈る気持ちでなのははノブに手を掛けた。鍵が掛かってませんように。それだけを祈っていた。
もし鍵が掛かって扉が開かなかったら……その時は天運に全てを任せるしかない。
ノブを回し、思い切り扉を押し開いた。だが、余りにも勢いが強すぎたのか掛かっていた筈の鍵はひしゃげて破損し、扉は留め金部分がねじ曲がり飛出してしまった。まぁ、とどのつまり勢い余って鉄製の扉を破壊してしまったのである。
「や……やっちゃった……どうしよう……」
余りにも慌てていたせいかも知れないがこれは相当不味い事になった。まさか人様の家の扉を壊してしまうなんて。これがこの家の人に知れたらとんでもない事になる。
何とかして隠し通した方が良さそうだったので、とりあえず扉を元の位置に戻してその場を凌ぐ事にした。
「って、こんな事してる場合じゃないんだった! 厠、厠どこおぉぉぉぉ!」
徐々に顔面が青ざめだし、必至になって厠を探し出す。カウントダウンが近づきだしている。急がなければ手遅れになってしまう。生まれて間もない赤子や幼児ならともかく9歳にもなって道の真ん中に青春の汚れた1ページを描くのだけは阻止したい。
もう時間が余り残っていない。
「厠なら向かい側の扉っすよ」
「どうも有難う!」
そんな矢先、背後から促すような声が聞こえ、その声が誰なのか判別する間も無くなのはは一目散に厠へと駆け込んだ。あの急ぎ様からして相当てんぱってたようだ。
「やれやれ、そう言えば此処に厠無かったのすっかり忘れてたっすよ。うっかり鍵まで掛けちまったからあの子にゃ悪い事しちゃった
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ