第70話 雨の降ってる日には傘をさそう
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その日もまた、空は鉛色をしていた。空からは黒い色の雨が降り注ぎ、大地を濡らしていく。
その日の雨は、何時もより冷たく、とても痛く感じた。
「・・・・・・・・・」
幼い二人の少年少女。二人の前には一体の骸が横たわっていた。既に肉は土に返り、骨しか残っていない。
少女はその髑髏を手に取り、まるで壺でも鑑定するかの様にじっと見つけていた。
「それが、お前の親父か?」
「間違いない……この欠けた前歯、お父ちゃんのそれと同じだ」
少年、坂田銀時の言葉に少女、高町なのはは静かに頷き、髑髏をその両手で抱きしめて蹲った。
「やっと……やっと見つけた……見つけたよ、お父ちゃん」
「………」
髑髏を抱き、泣き崩れるなのはと、それを隣で困ったような表情で見つめる銀時の姿があった。長い月日が経ったようにも思えた。今まで幾体もの骸をひっくり返し、その余りにも凄惨な死に様に幾度となく嘔吐した。その末にようやく、ようやく念願だった父に巡り合う事が出来たのだ。
だが、その父は骸すらなく、骸骨となり果てていたのだが。
「お前の父ちゃん、相当昔にくたばったんだな。鎧の壊れ具合からして、こりゃ鉄砲にやられたんだろうな」
「お父ちゃん……」
「親父さんを見つけたんだ、もう此処にも用はないだろ? そろそろここら辺の骸にゃ碌なのが残ってねぇし、とっとと場所変えるとしようぜ」
「その前に……お父ちゃんの墓……作りたい」
「………」
そう言って銀時を見上げるなのは。その目を見た銀時に、申し出を断る事は出来なかった。
面倒臭そうに頭を掻き毟りながら溜息をつく。
「わぁったよ。だけど、こんな所に墓作んのか?」
「出来れば、戦場から離れた所に作りたいの……ダメ、かな?」
「別に良いぞ」
ぶっきらぼうに答える銀時に、なのはは満面の笑みを浮かべた。今まで死人みたいな顔をしていたなのはの顔に生気が満ち満ちてくるのが見える。
不思議な感覚だった。今まで一人で生きていた筈なのに、こいつに会ってから妙におかしくなりだした。何故か、こいつが側に居てくれないと落ち着かない。と、言うよりも……こいつが近くに居てくれないと不安で仕方がないのだ。
(ったく、俺ぁ保護者かよ!)
自分で自分にツッコミを入れる銀時。とにかく、今はさっさとこの髑髏の墓を作らなければならない。そして早いところ雨宿りする場所を探さなければ風邪をひいてしまう。
根無し草の二人にとっては風邪でも致命的な物になりかねないからだ。
その日一日を生きるだけでも必至な上に、まだ二人とも年端もいかない子供だ。この時代で親の居ない子供が風邪をひくのは死と同義語とも言える。
「作るのは良いが、せいぜい持って行けるのはその髑髏位だぞ。幾ら二人居て
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