何もなかった…
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家に到着し、アーサーと一緒に玄関に入る。
するとリビングに行きかけていた、アルフレッドと目が合った。
「あ、ただいま戻りました」
「お帰りなんだぞ! アーサー、菊と一緒だったのかい?」
アルフレッドは、ジッと菊たちを交互に見つめる。
「えっ? あっ、違いますから! たまたま玄関で会ったばかりですよ」
(また変な誤解されたら……)
「どーせ、これが欲しいんだろ?」
アーサーはアルフレッドに、コンビニの袋からチーズを渡した。
途端にアルフレッドはニカッと笑う。
「ありがと。アーサッ」
そのまま部屋へと戻ってしまったアルフレッド。
「すごい。どうして何も言っていないのに、アルフレッドさんがチーズを欲しいって、わかったんですか?」
“空気を読む”とも何か違い、“目は口ほどにものを言“ったわけでもないのに、と菊は首を傾げた。
「さぁ、なんでだろうな……」
アーサーはとくに答えずに玄関にあがる。と、部屋に入りかけて『あっ』と振り向いた。
「……そうだ。さっきは悪かったな」
言いながら、もう一つ手に持っていた小さな袋を差し出した。
「え?」
中に入っていたのは、あのヨーグルトだった。
「あっ、これ……!」
驚いてアーサーを見上げる。
「……ギルベルトに聞いたんだ」
「じゃあ、犯人はアーサーさんだったんですか!?」
アーサーはクスッと笑うと、菊に近づいてヨーグルトをちょんとつついた。
「名前…ちゃんと書けよ?」
上目遣いの瞳が、すぐそこにある。
トクンッ……と心臓が脈を打つと、アーサーはスッと離れて自分の部屋の方へと歩いて行った。
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自室でスプーンをくわえながら、菊は呟いた。
「やっぱり、これですよ。美味しい…」
パッケージを見つめながら、アーサーの先ほどの様子を思い出す。
コンビニまでの道。
肉まんを分けてくれて、笑い合ったときの顔……。
(……確かに、フェリシアーノさんの言う通り…楽しそうに笑っていたかもしれません)
いつか読んだクラッシック演奏者の雑誌に載っていたアーサーの、どこか冷めたような微笑みとはまた違う。
(……って、何、考えているんでしょう、私)
菊は勢いよく、椅子から立ち上がった。
「さぁ、仕事仕事。締め切りは明後日です」
気持ちを切り替えて、目の前に広げたままの原稿やら筆記用具やらを整理する。
そして菊は、皆が寝静まる深夜に、ホラー映画の見過ぎで眠れないアルフレッドが『お腹空いたんだぞ! 』と部屋を訪れ、時計を
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