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Shangri-La...
第一部 学園都市篇
第3章 禁書目録
七月二十九日・夜:『竜王の殺息』
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だろ。学園都市の人間で、マトモに勉強してる奴なら誰でも知ってる》
「え──し、しかし、最大主教は確かに」
《ソイツがどれだけの魔術師かは知らねェが、此方は脳味噌を弄くるのが専門の、クソッタレにも程がある科学の最前(いやさき)。それに────()()()だ、間違いねェよ》


 言葉に、思考を停止したかのようにフリーズした彼女の後ろの一室を目指して。“唯閃(ゆいせん)”を受け止めた事でズタボロになっている両掌を修復しながら。
 前方の踊り場に満身創痍を押して這い上がってきていた、荒い息を吐いているステイルを一瞥し、興味なしに無視して。


「待ちなさい……殺すのでは、なかったのですか?」
《…………殺しただろ、こんなド素人の魔術使いに二人がかりで負けた一線級の魔術士なんて────死んだも同然じゃねェか》


 思い出したかのような火織の問い、『浅瀬の四枝(アトゴウラ)』の誓いを。それに、振り向く事なく。『陣を敷いた者は敗北せず、陣を見た者は撤退せず』に、終わったこの戦場に背を向けて。
 嚆矢は、インデックスと当麻の居る小萌の部屋を目指して────


《嚆矢────高熱源反応、その部屋じゃ!》
(何────?)
《まだ、高まっておる…………いかん、来るぞ!》


 今し、ドアノブを回そうとした瞬間の“悪心影(あくしんかげ)”の悲鳴じみた言葉に、空間を軋ませる程の魔力の昂りを感じ取り。


《チッ────神裂!》
「くっ────!」


 その射線から逃れるべく、火織を抱えて後ろに跳ね退いた。まさにその刹那、壁ごとその空間が消し飛ばされる。
 ()()()()()()()()()、それすらも貫いて。


『警告────“首輪”の全結界の貫通を確認しました。“自動書記(ヨハネのペン)”を起動……』


 それを成した無機質で機械じみた抑揚のない声の、宙に浮かぶ白い娘────


『魔法名“Dedicatus 545 (献身的な子羊は強者の知識を守る)”は、十万三千冊の『書庫』の保護のために侵入者の迎撃を優先します』


 瞳に鮮血の如き赤色の魔法陣を(みなぎ)らせながら、周囲の空間を漆黒に染めるほどに壮絶な魔力を昂らせた『禁書目録』が、その姿を現した。
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