暁 〜小説投稿サイト〜
遊戯王GX〜鉄砲水の四方山話〜
ターン17 冥府の姫と天球の司
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。ほらほら、そんなとこで座ってたら風邪ひくよー」
「どういたしまして、なんだって………むっ」

 ソリッドビジョンが消えて、辺りの風景が天空の聖域からもとの校内に戻っていった。いくら光の結社とはいえ女の子を放っておくのは趣味じゃないので、へなへなと力が抜けたようにその場にへたり込んでいる天下井ちゃんに手を伸ばす。やや夢想の視線がキツイ気がするのはたぶん気のせいだと思いたい。やっぱ怒ってるんだろうな、染みのこと。

「あら、ありがとうございますわ………って!ちょっとあなた、ワタクシに気軽に触れないでくださいます!?」

 おっと、思ったより元気なのね。一瞬はぼんやりしたまま僕の手を掴んだものの、すぐにはっとしたように振り払ったかと思うとそのまま立ち上がってスカートを手で踏んづけて転ばない程度に持ち上げながらパタパタとどこかへ走り去ってしまった。

「清明、今ちょっと残念そうじゃなかった?」
「え?いや、別に」
「ふーん。まあいいけど、だってさ」

 やっぱりどこかよそよそしい態度の夢想。………制服のクリーニング代っていくらぐらい出せばいいんだろうか。今月のレッド寮の赤字額をざっと暗算して、いくらぐらいまでならギリギリ出せるか考えていると、底抜けに明るい声が聞こえてきた。

「おーい、ここにいたのか清明!今光の結社のやつとデュエルしてさ、修学旅行、童実野町に決まったぜ!!」





 …………え?

 一瞬、ほんの一瞬だけ固まってしまった。ただでさえ光の結社関係で気苦労の多い十代に余計な心配をかけたくないので、無理やり笑顔を作り出す。

「そ、そう。デュエリストの聖地じゃん、やったね」
「おう!あー、俺もう今からワクワクが止まらないぜ!」
「あは、あはは………」

 童実野町、か。…………童実野町、か。
 だけど、その瞬間自分のことで頭がいっぱいになってた僕は気づかなかった。夢想もまた、その地名を聞いた瞬間に顔がこわばっていたことに。
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