意味と狂人の伝説――収相におけるナエーズ――
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(さざなみ)が起きて、様々な情報を伝えた。
緊張する事に疲れたペシュミンは、まどろみの中で隊列の最後尾がカルプセスを出たという話を聞いた。目を覚ました時には、戦闘のどさくさでカルプセスに取り残された兵士とネメスの木兵隊、兵役経験のある市民とで、臨時のカルプセス守備隊を結成するらしいと、人々が噂していた。それを聞いて、何人かの老人が神殿から出て行った。ペシュミンは伸びをする。つられてミハルが目を覚ます。日は既に高い。
時は緊張を連れ去ることなく、秋の蛇のように進んだ。
神官たちが来て、避難所が分散される知らせをもたらした。二階の廊下から、更に人が減る。少なくとも魔術による攻撃は止んだようで、もう轟音は聞こえない。
次に兵士が来て、避難民たちの数を数えていった。
とうに正午を過ぎたと思う。ペシュミンは空腹だが、それを言い出せない。誰も言い出さないからだ。
次に来たのは、ペシュミンから見たら大きなお兄さんたち、大人たちから見れば、十三歳以下の少年たちだった。彼らは街を守る大人の手伝いができる誇らしさで胸を張り、
「グロズナはみんな外に出て!」
と、神殿中に触れ回った。
「外に出てどうするんだい?」
ルドガンが尋ねる。少年は答える。
「何かね、グロズナの人たちはリデルの神殿に避難してもらうんだって! 理由はわかんないけど」
グロズナ達は不審に思う。しかし、それを伝えに来たのが子供である事が、彼らの油断を招く。
「ミハル、待ってなさい」
ルドガンは腰を上げ、最後にミハルの頭に手を置いた。
「おじさんは少し、行って来るよ。何もなければまた後で迎えに来る」
ルドガンは戻って来なかった。時折ナザエがもらってくる水以外、二人は何も口に入れず、またも過ぎ去る時をやり過ごすのみとなった。
大人たちはぽつぽつと、声を潜めて話し始めた。
「おじさん、遅いね」
ペシュミンが話しかけたのをきっかけに、ミハルとペシュミンの間にも、ようやく会話が生まれた。
ミハルは初めてカルプセスに来た時、おじさんが食べきれないほどの手料理でもてなしてくれた事を喋った。生まれ育った村にいる両親の事や、心躍る狩猟祭の事、その祭りで行われる、子供たちによる狩りの演習の事を喋った。
「その出しものにはね、木をこう、人の形に束ねた物を使うんだ。それを、弓とか槍で射ったり、射したりするの」
「ミハルもそれをやったの?」
「ううん。だけどね、お父さんが、この出しものの事は、カルプセスに言ったら話しちゃ駄目って言うんだよ。特にペニェフには駄目だって。でも、そんなの、おかしいよね。おじさんはペニェフにもグロズナにも違いはないって言うのにね」
廊下に射しこむ日差しの角度が変わり、少しずつ暗くなる。どこかで赤子が泣き始めた。赤ちゃんも何も食べてないん
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