プロローグ
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てことは全く面識のない子供の世話を俺だけで一週間もしなきゃいけないってこと!?
「無理でしょ」
自然とそんな言葉が口をついた。
「もう報酬食べちゃったんだから駄目よ。私が食べないで我慢していたのに」
そうだよねー。こんなに良いお寿司を母さんが食べないワケないもんねー。
いや、ここで引いてはいけない。俺の大切な冬休みとグータラ生活と、あと……あと色々なものを守るためにもここは引いてはならないっ!
「そんなことよりちょっと待てよ。一週間とか無理だろ。叔母さんが連れて行った方が良いんじゃないの?」
別に楽をしたくて言ってるんじゃない。子どものことを思っての発言だ。
「何でもヨーロッパを点々とするらしくてスケジュールもカツカツなんですって。だから連れて行く方が危ないんじゃないかって。大変よねぇ、ファッションデザイナーって」
言い終わってお茶を一口。お母様、何を他人事のように。
「真面目な話、頼れる人が居ないのよ。叔母さんはシングルマザーだし、お婆ちゃん一人に任せる訳にはいかないでしょ。せめてお爺ちゃんが生きていればね」
「ふーん、大変なんだね」
いや、大変になるのは俺か。いまいち実感が沸かないなぁ。
入れてもらったお茶を一啜りしてマグロを食べる。半分食べてしまったんだ。ここまで来たら全部食べよう。
開き直ったそんな時、ふとある疑問が俺の中に湧いてきた。
「ウチ……って言うか俺に頼まなくてもベビーシッターを雇うとか何とか出来ないの?」
もっともな疑問だ。素人の俺に頼むより、プロに頼んだ方が良いに決まってる。
確認だが、別に楽をしたくて言ってるんじゃない。子どものことを思っての発言だ。うん。
「最近、色々と物騒になってきてベビーシッターだって信用出来る世の中じゃないでしょ。頼りにされているんだからしっかりなさい」
「はいはい。そのかわりお金はたっぷり置いて行ってくれよ」
せっかく時間のある大学生の冬休みだってのに、面倒なことになったもんだ。
こうなったら覚悟を決めるか。
そう思い直して有り難く戴いた高級なお寿司を全て平らげるのであった。
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