彼らの黒の想い方
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けたモノでありながら優しく、労わるような視線を持っていた。
「……あんたは御大将とは違う。ほとんど同じだが絶対に違う。でもよ……俺らは御大将と同じ扱いしかしねぇぞ」
「だからそんな寂しがるなよ。あんたの事も信じてんだ」
「許昌で待ってるバカ共もいんだ。早く帰って酒飲みてぇ。もちろん、ゆえゆえとえーりんと鳳統様も一緒に……だろ?」
優しい、優しい声だった。
彼らからの声に、徐晃殿は何も言わずに馬を進めて行った。少しだけ、肩を震わせながら。
月光の上、彼は天を仰いで大きな声を張り上げた。
「敵わねぇなぁ……ああ、敵わねぇ! 行って来るぜ、バカ野郎共が!」
初めての戦であるはずなのに、彼が自然過ぎたから、わたしは気付かなかった。
向ける信頼から、徐晃殿は誰の事も顧みないで笑っていたのか。弱い自分を見せないままで。
繋がれた絆から、彼らはそんな彼の事を容易く見抜いた。気にするな、と笑いながらおどけて貶して励まして。
此れが徐晃隊。彼が作った、彼の為だけの兵士達。否……彼の為を想う兵士達。
将が率いるというよりも、本当の意味で、一人ひとりが肩を並べて戦っている。
「なぁ、楽進殿。きっと前の俺はあいつらが居なきゃ戦えなかったんじゃねぇかな。だからそういうのは、強いってのは多分……あいつらの事を言うんだぜ?」
羨ましい……心の底からそう感じた。
――そんな事、ないですよ。あなたが居るから、彼らは強く在れる。わたしはそう思います。
口には出さない。言ってしまっても彼は否定するだろうから。
辛い事ばかりの戦に於いてせめて気持ちが折れぬようにと、彼と彼らは道化師のように、誰かの為の笑顔を浮かべる。
それが黒麒麟の本当の強さで、きっと黒麒麟だけが持てる力になっているのだ。
――わたしには、何があるんだろうか。
考えてみよう。真似しなくてもいい。自分らしい色を見つけてみよう……そう思えただけでも、わたしにとっては何よりの学びの時間だった。
†
広く構えた戦場の型は様々に変化を遂げ、それでも変わらない場所がまだ一つ。
固く構えた中央よりの左翼の陣型、猪々子が居るその場所だけが熱気と気概に溢れている。
居並ぶ袁紹軍の兵士達は彼女の決死の想いに寄って立ち、決して抜かせはしないと気合を込めて戦う。
「守れ! 手が千切れても守れ! 脚が動かなくなっても守れ! 首だけになっても喰らい付いて守れ!」
張りのある声がよく響いていた。
大量の兵を操る様はまさに武将のそれ。
将の階級は数段あるが、将軍と呼ばれるのは万を超える兵を率いれるモノが呼ばれる。その点で言えば、猪々子はそう呼ばれるに相応しい働きを見せていた。
バカだと
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