彼らの黒の想い方
[4/21]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ぁ……」
ガシガシと頭を掻いて、呆れたように彼はまた笑う。その瞳に昏い色は無く、キラキラと輝く子供のような色があった。
「お前らはどう思う?」
不意に、彼は兵士達に声を投げた。普通は兵士に意見を求める事などしないのに、平然と。
周りに居た黒の兵士達は、彼をじっと見やって……幾人かがやれやれと首を振って口を開いた。
「人を試すクセ、程々にした方がいいぜ、徐晃殿」
「本気でするつもりが無いなら口にすんなバカ野郎」
「俺らにも止められるって分かってやがる癖に」
口ぐちに咎める彼らには呆れの雰囲気。全てお見通しだと言わんばかり。
「あー、やっぱお前らにはバレるのか」
「当たり前だ。いっつも御大将は俺らを試してやがったんだからよ」
「部隊所属の初めっから兵士を試すような奴だったんだぜ? もう慣れた」
「クク、そうかいそうかい、お手上げだ……ったく、敵わねぇなぁ」
――試す? 今の策の話は……わたしを試していた?
目を瞑っている彼は嬉しそうに微笑んでいた。後に、ゆっくりとわたしと目を合わせて、すっと頭を下げる。
「すまんな楽進殿。試させて貰った」
「何故、試したのですか?」
別に試された事は気にならない。その程度で怒る気にもならない。華琳様もよく人を試すし、何かを見極めるには必要な時もあるだろうから。
「俺から学びたいなんて言うから、何を学びたいのか分からなくてな」
何かを教えられるほどの人間じゃない、と締めくくって、彼はわたしから目を切って戦場をぐるりと見渡す。
全ては言ってない。そういう人だ。わたしに考えさせるように発言を選んでいる。
「……自分は強くなりたいんです。あなたとあなたの率いる部隊は強い。記憶を失っていてもあなたは黒麒麟と変わらなかった。自分は……あなたを越えたいんです」
はっきりと口に出した。
彼と彼の部隊。“黒麒麟の全て”を越えたい。それがわたしの中にある一番大きな欲だ。
春蘭様や秋蘭様、霞様に追いつくには、今のままでは足りなさ過ぎる。
指揮の方法を盗めばいいのか? 経験を積めばいいのか? それとも自分の力を高めればいいのか?
否、その程度では無いのだ。この人達のような……兵達を引きつけて止まない求心力は。自在に操れる程の信頼を持たせるには。
少しだけ、今回率いていた奴等は信頼を持ってくれていた。だがまだ足りない。もっと、もっと……わたしは……。
「強さってのはよく分からんもんだ。越えた越えてないは他人の評価でしかない。だから俺はお前さんが学びたい事の答えは持ってない。自分で考えて見つけるしかないと思うが……まあ、気が済むまで好きにすればいい」
大きなため息を一つ。もうこれ以上は話すつもりも無いようで
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ