彼らの黒の想い方
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気を引き締める。
強く見据えると、彼はまた苦笑を零した。
「クク、そう固くなりなさんな。せっかく可愛い顔してんのによ。ま、難しい顔も凛としてて絵になるけど」
「……っ。軽い言葉は戦場では不必要です」
「事実だ。お前さんは可愛い。真桜の部隊のバカ共にも見惚れてる奴多いって聞いたぞ?」
「なっ……だ、だから、そ、そういうのは……」
自分でも気付く程に顔が熱くなった。この人はいつもこうだ。人が真面目にしているのに空気を読まないで崩して来る。読めないのではなく、読まない。
戦中だから少しでも早く動いた方がいいのに、のんびりと構える姿はわたしを苛立たせる。
睨むと、彼は残念そうに首を左右に振った。何故そんなに落ち込むんだ、あなたは。戦中くらい集中して欲しい。
「楽進殿にしてほしいことだが……二つから選んで貰う。一つは袁紹軍を追い詰める為に部隊を率いて敵を誘導すること。もう一つは……俺と一緒にちょっくら無茶をする事だ」
楽しそうに話す彼は何を考えているのか。
無茶と言った。わたしの身を案じるでなく、この戦場を操る為に共に戦おうと、そう言うのか。
「無茶、とは?」
聞き返すと、彼はまた悪い笑みを浮かべる。
悪戯が好きな彼らしい子供のような……でありながら、悪辣だと感じてしまうのは、彼の持つ冷たさを見た故だろう。
「明が気絶した顔良を馬に乗せて文醜の近くまで行くから、敵が引き付けられてる隙に奇襲を仕掛けて文醜を捕まえる。独断専行だし連携なんざ期待出来ん無茶ってわけだ」
茫然と彼を見つめた。
この人は最大限に人質を使うつもりなのだ。勝ち戦だとしても……その行いは余りに卑劣ではないか。
誇りなど欠片も無い。もう落胆の心が抑えられなかった。
「……わたしは反対です。何もそこまでする事は無いでしょう? そのような方法を用いてしまっては……我らも袁家と同類に成り下がってしまう」
「兵士達が付いて来なくなる、風聞が悪くなる、曹操殿の名にキズが付く、お前さんらに嫌われる……不利益はそんなとこかね」
「そうですよ! 華琳様が掲げる誇りを穢してしまっては……」
自分の言い草に違和感を感じて言葉を止めると、徐晃殿の目が細まった。
違う。わたしが嫌なんだ。華琳様を理由にしてはならない。
「わたしが……嫌なんです。そんな戦いをしたくない。例え……犠牲になる兵が増えるとしても……」
胸を張って勝ったと言えるか。そんな勝ち方をして、満足できるか。否、否だ。
そんな戦を続けてしまうと……この世界は、根本的な所で変わらない気がする。華琳様の所で戦う意味さえ、無くなってしまう。
「一人でも多く救いたいのにか……俺と明を受け入れるならそれくらいの策は使ってみせるべきなんだがな
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