第09話 妖艶のベルカ
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上げた。
セキレイたちはそれを後ろ目に全速力で走った。
「何でまたさっきみたいなデカ虫が追いかけて来てんだよッ!?」
「″鎧虫″よ!多分、戦国博士が外から捕獲したか自分で作ったのよ!
それを、私たちを殺すために解き放っただけッ!!」
そう言うと、カツコは立ち止まって再び右の袖を二の腕までまくった。
「カツコ、ここはワシがやるからお前は逃げろ!」
カイエンは彼女の肩を掴んで前に出ながら言った。
しかし、それを腕を出して止めた。
「私‥‥‥‥‥‥守られてばっかじゃ嫌よ。
お互い支え合ってこその夫婦でしょ?」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
少しの間を置いて、カイエンは一歩下がった。
「仕方ないのぅ。じゃが、危なくなったら下がれよ」
「言われなくてもわかってるわよ」
カツコは笑顔を向けると、鎧虫の方に顔を戻してゆっくりと歩いて行った。
向こうから遅って来ている″鎧虫″たちとは、まるで対照的な動きだった。
「さぁ、かかって来なさいッ!」
カツコは″鎧虫″たちの前で仁王立ちした。
「ギッ!?ギィィィッ!!?」
すると、さっきまで血気盛んに攻めて来ていた″鎧虫″たちが
その脚を止めて動かなくなった。何かを警戒しているようだ。
「あら、気付いちゃった?私が危険って事」
カツコは少しずつ近寄って行った。
しかし″鎧虫″が離れて行くので結局、距離は縮まらなかった。
「これじゃあ話にならないわね」
そう言いながら右手を差し出した。
それを見た″鎧虫″たちはビクッと身を強がらせた。
ブワァァァァァァッ!!
右手からツタのようなモノが明らかに
質量保存の法則を完全に無視して、這い出て来ていた。
しかも、それにはトゲまで付いており
あからさまに自らが危険な事を表していた。
「〔 棘の花園 〕」
イバラは″鎧虫″たちを完全に取り囲んだ。
沢山の″鎧虫″たちを入れ込んだ籠の様に
上下左右、脱出不可能な牢獄を彼女は作り出した。
「やっぱり衰えてないな‥‥‥‥‥‥ベルカは」
カイエンは、しまったと言いながらすぐに口を閉じた。
ハトは気になったので彼に訊いた。
「ベルカって、もしかしておばちゃんのお名前?」
彼はため息を一つ吐くと答えた。
「ワシも実は偽名じゃし、それは彼女も同じじゃ。
彼女は一昔前には、″妖艶のベルカ″と呼ばれるほどの
強くたくましく、そして美しい女性だったんじゃ」
カイエンは中で戦っているベルカの姿を眺めていた。
彼女は範囲の限られた空間の中を舞い踊っていた。
「やっぱり昔と変わらんのぅ」
彼は昔の姿と重ね合わせながらつぶやいた。
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