第09話 妖艶のベルカ
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「見つけたぞ!!」
セキレイたちの元に軍人たちが銃を構えたまま走って来た。
彼らは表向きは戦国博士に忠誠を誓っている。
だが、実際はこの不自由な世界を生き抜くためのいわば“擬態”である。
「覚悟しろ!!」
そう言って全員は改めて銃をセキレイたちに狙いを定めた。
セキレイはゆっくりと立ち上がって軍人たちを見た。
「お前らも‥‥‥‥俺と一緒なんだな‥‥‥‥‥」
軍人たちは、職員と同じく実験を受けずに待遇されていたのではないか。
今までセキレイはそう思っていた。しかし、今は違う。
むしろ、収容者たちよりも厳しい場所だったのではないだろうか。
一度命令を背けば、彼らも収容者と同じ、いやそれ以上の目にあうだろう。
故に“擬態”。己を危険から守る為に己の見た目を変えている。
この施設の職員たちは、そうして生き延びてきたのである。
「“自由”じゃ‥‥‥‥ないんだな‥‥‥‥‥‥」
セキレイはそう言いながら彼らの方に向かって歩き始めた。
「全員、掃しゃ――――――」
ドスッ!!
この隊の隊長らしい人の言葉は
セキレイの一撃の前に阻まれた。
鉤爪が彼の腹に深々と突き刺さっていた。
「ガハッ!!」
隊長は血を吐いた。おそらく鉤爪が内臓を傷つけたのだろう。
このままでは彼は出血によって死んでしまう。
だが、隊長の顔は不思議と安らかに見えた。
セキレイは耳元に口を近づけた。
「アンタも‥‥‥‥“自由”が欲しいのか?」
彼はそれを聞いて目を見開いた。
そして、痛みに耐えながら口を開いた。
「私も‥‥‥君のような力があれば‥‥‥‥‥」
彼の声は震えていた。
人は事実を突きつけられると感情が動かされるのだ。
彼は歯を食いしばり、悔しがっていた。
「‥‥‥‥‥お互い大変だよな」
セキレイは少しだけ微笑みながらそう言うと
爪を抜いて、ゆっくりと気遣いながら隊長を横に寝かせた。
「おばちゃん。治してやってくれないか?」
それを聞いたカツコは少しの間、困惑していた。
しかし、すぐに頷いて近づいて行った。
「貴様ッ!隊長に情けをかけるのかッ!!」
立ち尽くしていた軍人たちの一人が怒鳴った。
「死んで初めて“自由”が手に入る奴もいる。
その事実をつい最近に突きつけられた。
でも、やっぱりおれは誰にも死んで欲しくないんだ」
セキレイは遠くのカメラを一つ見ながら言った。
「戦国博士‥‥‥‥アンタには感謝してる。命の恩人だしな。
でも、どうして“自由”を奪うんだ?
家族みたいに、みんなで楽しく毎日を過ごせばいいんじゃないのか?
アンタは自分以外の人間をただの道具ぐらいにしか思わないのは何でだ
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