第5話「旅行先ではだいたいケンカする」
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目覚めた狂気の苦しみに堕ちた妹を。
『さよなら』
そして妹の手を離してしまった。護ると決めたその手を。
もう戻らないと思っていた。
でもまたこうして自分の元にいる。
それなのに近づき過ぎるほど、荷の重さを忘れてしまう。
――謝っとくか。
そうして銀時はレイからトランプを受け取り、双葉のいる部屋の前に立つ。
妹が抱く他愛ない憧れに気づけず、また手離してしまうところだった。
そんな自分に歯がゆさを感じるが、とりあえず今は素直になることが大事だろう。
「おいフゥ。さっきつーか……悪かっ――」
銀時は不器用に部屋の襖を開けた。
そこで彼が見たのは――
「ん?」
崩れた和服。剥き出しの艶美な背中。
寝巻に着替える途中の妹。
そう、双葉は半裸だった。
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「あ…」
お互いの時間がしばらく凍る。
そして――
“ボカッ”
顎から突き上げる激痛。
双葉のアッパーカットが炸裂したのだった。
* * *
【駄目だったようだねぇ】
廊下に響く銀時の悲鳴を耳にして、レイは兄妹喧嘩の行く末を悟った。
無口で無愛想の堅苦しい妹。よく喋る脱力した目の自由気ままな兄。
それだけ見ると性格は正反対の兄妹で、最初は本当に兄妹かと疑わしく思った。だがどちらかが怠け者だともう片方はしっかり者になり、それで世の中のバランスが保たれていると女将から聞いた事がある。あの兄妹がまさしくそうなのだろう。
一見中身に共通点がない兄妹――しかし仙望郷において通ずる所が一つある。
あの銀髪の兄妹は双方とも強力な霊感の持ち主だ。本人達に自覚はないようだが、力を引き出せばあの二人はお岩に匹敵するスタンド使いになるだろう。
廃墟と化してしまった仙望郷を変えられるかもしれない。
本来の仙望郷に戻れるかもしれない。
だが問題が一つある。憑依する『幽霊』だ。いくら使い手に力があっても、武器がサビついていては意味がない。下級霊の自分が銀時たちに憑依したところで、お岩には勝てない。
強力なスタンドが必要だ。TAGOSAKUに匹敵する霊力を持つスタンドが。
しかしそんなスタンドは仙望郷にはいない。仮にいたとしても、お岩が放っておかないだろう。
廊下を浮遊しながら思案を深める。だがやはり肝心のスタンドがいなければ話にならない。
仙望郷を、お岩を救う事はもう無理なのだろうか。
そう思ったさ中、ある人影が廊下を通った。
驚くレイの瞳に映ったのは――
* * *
雪が深々と降る夜。縁側の片隅で柿
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