第5話「旅行先ではだいたいケンカする」
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たか!?」
そんな考えが頭をよぎったが、部屋のゴミ箱にある残骸を見つけた。
『じゃがりこピザ味』の空カップが三つ。
“ピキ”
銀時はズンズン歩いて廊下にいた双葉に迫った。
「フゥ、テッメェ一人だけでピザ分摂取してやがったな!ざっけんじゃねぇぞ!ろくに糖分取れてねー俺ァ限界突破寸前だコノヤロー!!」
食べ物の恨みは恐ろしいと言わんばかりの怒声が廊下に響く。
だが返事はなかった。
「おい、聞いて……」
銀時の怒りは一瞬だけ静まる。
瞳はどこも見ていない。彼女はただ呆然と立っていた。
時々、双葉はどこかを見ている。現実も誰も映していないような瞳で。
それはここ最近気づいたこと。様子はおかしいと薄々思っていた。
だが今は怒りの方が大きくて、その疑問は消し飛んだ、
「聞いてんのかァァァ!!」
激しい怒声で双葉は我に返ったように銀時に目を向ける。
「なんだ兄者。いたのか」
「さっきからいたわ!つかコレ!!」
突き付けられた空のお菓子箱に、「ああ」と双葉は自分のモノと素直に認めた。
「オメー、来る前からここがどんなとこか知ってたんだよな」
「ああ。ネットの噂だったから信憑性はあまりなかったが……」
「だったら言えよ!」
「言ったら来ないだろ。せっかくの旅行を台無しにするなんてもったいない」
「旅行ってこれ心霊ツアーじゃねーかァァ!んなもん台無しになっていいわ!」
悲鳴に近い声を上げる銀時。冷めた眼で返されるのがいつものオチだ。
だがこの時、双葉の表情にはどこか陰が堕ちていた。
しかし思い思いに叫ぶのに夢中な銀時はそのことに気づかなかった。
「新八たちだって閣下にされちまって、どうしてくれんだよ!」
仙望郷に来なければ新八たちは閣下にも、永遠にUNOをし続ける運命を強いられずにすんだ。彼らがそんな姿になってしまった原因は、少なからず双葉にもある。無論、彼女だけのせいではないが、知ってても黙っていたことはこの状況を作り出したのと同じだ。
そのことは双葉も分かっているはず。しかし彼女の口から出たのは別の答えだった。
「なぁ兄者。閣下になったアイツらはどこに行ったんだろうな」
「何言ってんだ?誤魔化してんじゃねェ」
「簡単にとり憑かれるような弱者の事など知ったことじゃないな」
吐き捨てるような一言。それは兄妹の間に小さな亀裂を生んだ。
「おい!」
腹黒い性格の双葉が他人を見下す物言いはいつものこと。
だが自分の落度も認めない、身勝手で無責任な行動は兄として許せない。それが新八たちを傷つけるようなら尚更だ。
銀時はこの場から去ろうとする双葉の腕を掴んで、無理矢理振り向かせたが――
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「……」
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