第5話「旅行先ではだいたいケンカする」
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ない。
【フン、肝っ玉の小さい奴め】
「もう接客はいいよ。ギン、裏方に回って雑用でもやってな。表に出られちゃ『仙望郷』の看板に泥をぬられるだけだからね」
次々と降りかかる罵声にどうしようもない怒りがこみあげる。
ピキピキピキ――堪忍袋の緒が切れるのは目前に迫っていた。
* * *
銀時がお岩の説教をくらっている部屋の外でレイは浮遊していた。
別に待っているつもりはないが、世話係を任された身であるため彼を見ておかなくてはいけない。上司に叱られた新入りに、励ましの言葉をかけてあげるのも先輩の務めだ。
もっとも、これは彼女が独断でやっていることだが。
【あんた……】
銀時と同じ銀髪の女が廊下を歩いてくる。
部屋の中の兄が心配で来たのか。――と思ったら、彼女は部屋を気にする素振りも見せずレイの横を通り過ぎるだけだった。
その行動に多少の違和感を覚え、レイは通り過ぎた背中に疑問を投げた。
【あんた、自分のお兄さんが馬鹿にされてなんとも思わないの?】
自分が傷ついても、所詮その痛みは自分しか知らない。いくら身を投げようが、その苦しみが振ってかかってくるのは自分のみ。同様に他人の痛みや苦しみも、どうやったって自分には味わえない辛さだ。
しかし、自身が感じる苦痛はよく分かる。
だからこそ相手を傷つけたくない。ゆえに自分より友人や家族を傷つけられた時ほど、人の怒りは大きい。それが大切な人なら尚更だ。
双葉にとって銀時は大切な人なのだろう。昨日自分に向けられた視線から分かる。
「なんとも?そんなの……」
歩みを止めた双葉の語尾が一瞬だけ詰まる。
そして――
「あるわけないだろ。なぜ私が兄者の心配をする必要がある」
そう言い捨てて彼女は去って行った。
* * *
薄暗い廊下を歩く。幾度も探し回る。
だが望むものは見つからない。
代わりに青白い火の玉が現れる。無数の声が響く。
【【【―――】】】
無数の声のたった一つの願い。
その願いの中に求めているものはない。
だが幻想を模索する影は静かに頷いた。
* * *
行き場のない状況に頭を抱えるが、もう一つ銀時を悩ませている事がある。
定期的に甘い物をとらないとイライラするだけの銀時と違って、双葉は数日ピザを食さないだけで禁断症状が出るほどのピザラー。収入の不安定な万事屋で毎日ピザを食べるのは無理なので、いつもはトーストパンにチーズをのせたピザ風食パン・通称「ピザもどき」を食べている。
だがそれでも数週間に一度食べないとイライラする体質だ。そんなピザラーがもう二日も食べていない。ピザもどきすらろくに食べれないこの環境を一番嫌う人間が文句ひとつ言わない。
「アイツまさかキャラ変更しやがっ
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