第1章 群像のフーガ 2022/11
9話 頼りない壁
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張りつめた空気が弛緩していくのを感じながら三人を眺めていると、ヒヨリが真横に並ぶように立っていた。
「行かないの?」
「俺は碌なことしてないからな。ああいうのは結果残したヤツの為の舞台なんだよ」
「でも、燐ちゃんは………」
「――――なんでだよ!!」
突然の叫びに、驚いて竦んだヒヨリが言葉を途中で切る。泣き叫ぶような声に周囲は再び静まり返り、俺も咄嗟に声のする方向へと視線を向ける。
そこに立っていたのは、ディアベルと同じPTのシミター使いだった。ただひたすた憎悪の籠った瞳で、射抜くような視線を俺に向けていた。この場においてそれほどの感情を溢れさせる要因となったのは一つしか思いつかないし、いつかはこうなることも覚悟はしていた。シミター使いは歪んだ口から続けて言い放つ。
「――――なんで、ディアベルさんを見殺しにしたんだ!!」
「見殺し………?」
シミター使いを見てキリトが呟く。ディアベルの死を看取りはしたものの、彼は当事者ではないので状況がわからないのだろう。だが、このシミター使いは俺に向けた憎しみの籠った視線をキリトにも向けて叫ぶ。
「そうだろ!! そいつが途中でスキルを止めなければ、ディアベルさんは死なずに済んだんだ!! お前だって最初からあのスキルの事を伝えていればこんなことにはならなかったのに………!!」
悲痛な糾弾に、周囲も同調するようにざわめき出す。新規プレイヤーが知り得る事前情報を逸脱した内容変更に加え、しかもそれに対する対応を知っていたとなれば、もう言い逃れはできない。ここにいる誰もが気付いていることだろう。俺とキリトが、彼等において最も唾棄すべき存在であるということを。
――――そして、こうなるのを待っていたかのように一人の男が前に歩み出てきた。
「せやで………こいつらは知っとったんや。攻略本やいうて餌ばらまいて、終いには嘘情報掴ましてディアベルはんを殺して、ジブンらだけ旨いことLA盗りおった。ホンマ上手やなぁ………ベータ上がりっちゅうのはよぉ」
キバオウの言葉を聞くと、シミター使いは瞳により一層の憎悪を滾らせ、何かを叫ぼうとした。周囲の空気もまた刺々しい色を帯び始める。後ろでヒヨリがコートの袖を掴んでいるのを感じながら、今にも口を突いて出そうな言葉を堪えていると、アスナとエギルが声をあげようとするのをキリトが手で制して、一歩踏み出した。それまでの困惑した表情からは想像もできない傲岸不遜な表情で。
「キバオウ、それとアンタも面白いな。傑作だよ」
「な、なんやと………?」
無感情な、それでいて予想外の言葉にキバオウは尻込みするものの、態度は崩さない。しかしキリトは笑いを零しながら続ける。
「解ら
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