第1章 群像のフーガ 2022/11
9話 頼りない壁
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脛を掠める程度にしか用を為さなかったのである。僅かに軸をぶれさせた程度で、一瞬だけ呻いて硬直したものの、結局のところスキルの妨害には至らなかった。
しかし、スキルの発動を遅延させただけでも十二分の活躍だ。当然、このままでは為す術もなく壁役を担った俺達、いや、俺は何とか回避できるだろうが、敏捷ステータスを犠牲にしているB隊の面々は《旋車》の餌食となることは言うまでもない。現にコボルド王のスキルの発動が迫る中で場違いな考察ではあるかも知れないが、実のところ既に《どうにかなる》という確信があるのだ。
その刹那、期待に応えるが如く、キリトが横を猛スピードで通過した。黄緑のライトエフェクトを纏って剣を肩に担ぐように構え、コボルド王に向かって一気に跳躍して接近する。どうにも俺は、出会って間もないあのプレイヤーを心底信用しているらしい。
「届……けェ――――――――ッ!!」
右手を限界まで伸ばしつつ振るわれたアニールブレードはコボルド王の腰を深く裂き、クリティカルヒット特有の激しいライトエフェクトを撒き散らすと、巨体は空中で大きく傾かせて《旋車》の発動が中断され、地に墜ちるや否や短い悲鳴を漏らして立ち上がろうと手足をばたつかせた。人型モンスター特有のバッドステータス《転倒》だ。
遅れて、ふらつきながら着地したキリトはボスに向き直り、凄まじい声量で叫ぶ。
「全員、――――全力攻撃!! 囲んでいい!!」
「お…………オオオオオ!!」
B隊メンバー全員が怒号の如き叫びをあげ、コボルド王を取り囲んで縦斬り系のスキルを叩き込んでゆく。槍持ちの俺はスキルの阻害の要因となりかねないのでレイジハウルを回収して後方に下がり、メニューウインドウを操作、武具スキルを戻して槍を捨てる。
これでボスのHPを削り切ればいいのだが、もし僅かでも残って《転倒》から復帰されてしまうようならば即刻《旋車》によってB隊が斬り倒される。あるいは、これまでの変更に則って刀スキルに新たなソードスキルが出現している可能性だって否定はできない。何があってもおかしくはないのだ。
幾度目かのソードスキルの技後硬直を終えたエギルたちが、次のスキルの予備動作に移る。色とりどりの光が無骨な得物に宿るなか、その渦中でもがいていただけのコボルド王が途端に上体を起こした。
「…………間に合わないか!!」
押し殺した声で叫ぶキリトは、続いて声を張り上げる。
「アスナ、最後の《リニアー》頼む!」
「了解!!」
まるで長く連れ添ったパートナーであるような二人の意思疎通は一秒にも満たないような短時間で交わされ、即座にボスに向けて疾走する。
ボスのHPは残り少ない。しかし、
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