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エクシリアmore −過ちを犯したからこそ足掻くRPG−
第四十七話 「守りたい」と「守るべき」
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ゃない。
 実力者の人数でミラが戦わずして負けを認めてくれればという希望的観測もないわけじゃない。
 だが、戦うことになるだろう。あれは「ミラ」で「ミュゼ」だから。

 フェイが私の前まで戻って来た。
 見上げる瞳に、迷いは、ない。瞳に映る私自身にもないのだから、フェイにあるわけもないか。

 ヘリオトロープの色の両目。この目にラルを見て、「エル」を見た。
 今は、フェイしか、見えない。

「行こう」
「うん」





 山頂に登りつくまで、誰も口を利かなかった。穏やかに近況報告していられる状況ではないし、私としては、語るべきは語ったと思っている。何かを言うとしたら、それはミラとミュゼの件を片付けてからだ。
 後ろの皆も、心の整理はついたからここに来た。そのはずだ。

 山頂に着いた時、前に世精ノ途(ウルスカーラ)に通じていた次元の裂け目は消えていた。
 やはりな。持って来ておいて正解だった。

 担いでいた物を下ろして布を剥ぎ取る。ミラが譲渡した〈マクスウェルの次元刀〉だ。これでもう一度、世精ノ途(ウルスカーラ)への道を開く。

 〈次元刀〉を振り被り、振り下ろした。
 空間に縦の線が走り、裂け目が開いた。裂け目の向こう側には世精ノ途(ウルスカーラ)が見える。

「パパ」

 声をかけられたかと思うと、フェイに手を繋がれた。手袋越しにも分かる。
 冷たい。
 緊張しているのか?

「大丈夫だ。……」

 ああ。消滅を前にして達観したと思ったのに、とんだ思い違いだ。たった一言を言おうとするだけで拍動が速くなるなんて。

「パパが、付いてる」

 フェイは目を瞠ってから、泣きそうな顔で笑った。





 世精ノ途(ウルスカーラ)から青い惑星儀の大地に降りた時、ミラとミュゼは逃げも隠れもせずそこにいた。まるであの日の続きからリプレイしたかのようでさえあった。

「やはり来たか」

 修羅場慣れしている私でさえ気圧されそうだ。それだけ今のミラとミュゼには呵責がない。

 ミラの手には、私が持つ物と同じ剣が握られている。迂闊だった。ミュゼの力で再生成したのか。

「一度だけ聞く。降伏してはくれないか」
「それこそ私たちがするはずがないだろう」
「ミラ様!」

 イバルが叫んだ。

「どうしても、どうしても戦わねばならないのですか!? 世界を守るという意思は、貴女方と俺たちで違いなどないはずなのに」
「ああ、違わない」

 ミラは〈次元刀〉を胸の前まで持ち上げ、垂直に立てた。

「違うのは、何を『世界』と見なすか。私にとっては『人と精霊が共存できる天地』で、お前にとっては『リーゼ・マクシアとエレンピオス』だった。不幸なことにな」
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