温泉旅行(中編/最終日)
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まぁ、それが此処に来た理由なら、隠し事なんてして……ない、よな?」と、疑問系で尋ねてくる。
隠し事などはしていない、と否定は出来ないでいた。
俺の目の前に腰を下ろして胡坐を掻いている恋也にどう言い訳をすればいいのだろうか、そうやって悩んでいる時にも、不気味な空気が漂う。
どこか冷たいような、ぬるいような、そんな空気が。
『こっちにおいでよ』
ゾクリ、背中に冷たい風が通ったのが分かり肩が震える。
耳元で聞こえた声は一体、いつまで俺につきまとうのか、それすらも考えるのが恐ろしくなってしまう。
「隠し事なんか、して、ねぇよ」
それでも、隠し事などしていないと抵抗をした。
**
「なぁ」
「…………」
「なぁって」
「…………」
「なぁって!!」
「何だよ!」
どうしてなのか、急に耳元で叫ばれて、無理矢理恋也と向き合う様になる。
あの後、俺が海でも行くかと呟き、旅館を出て、森の中を歩いていれば恋也が急に俺の腕を引っ張って、無理矢理向き合うような体勢になった。
「何で俺が逆にキレられないといけない訳?ずっと呼んでるのに無視してるのはそっち……」
何かに気が付いたのか、落胆したように恋也は溜息をついて「そりゃぁ、イヤフォンしてたら聞こえないな」と呟いた。
今気付いたのか、と突っ込みを入れそうになるがそれでキレながら俺の腕を引っ張ったのかと、理解できたので別に気にする事もなく、森の中を歩いていた。
「って、聞いてないだろ」
腕が伸びてきたと思えば、イヤフォンを取って溜息をつく。
何故両方のイヤフォンを取ったのかは分からないが。
「聞こえてねぇよ」
「聞け!」
少しの言葉を交わしてから、俺たちは森を抜けて、海に出る。
波の音は聞いたことのある海そのものの音で、塩の匂いもいつも通り。
ただ何が違うのかと、問われると砂の色が白い。
この辺りには山はあるが、火山があるわけではないから、火山灰が降ってくるというわけでもないのだろう。
波の音を聞いていると、隣から自分の歌声が聞こえたきたのは聞かなかった事にしよう。
どうやらメールだったようで、端末を取り出して、すぐに返信をしていた。
「……確か、中央中学校の修学旅行って海だったよな?」
2年前、面倒だからなんて言って、行かなかった修学旅行の行く場所を尋ねる。
恋也は特に思うことはないのだろうか、未練がないような返事を返した。
「さぁ。修学旅行とかにはあまり興味がないからよく覚えてない」
恋也が学校行事に興味がないのは俺は知らない。
ただ知っているのは小学生の修学旅行の時、熱を出して行けなかった事と、身内以外誰一人、お土産もなにもくれなかったという事。
推測でしかないが、きっと、恋也は
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