意味と狂人の伝説――収相におけるナエーズ――
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こにあった。
「隊長、どうか……」
ロロノイが両手でデルレイの手を取り、握りしめた。
「妹をお願いします」
「わかってる」
隊長は頷き、空いている方の手でロロノイの背を叩いた。ロロノイは隊長から手を離して、背を向け走り去った。たった今、兄妹二人で歩いて来た道へと。
「兄さん!」
ラプサーラは叫んだ。叫び、手を伸ばした。ロロノイは人ごみに紛れて、すぐに消えた。
両目から涙が溢れ、止める事ができない。デルレイが歯ぎしりし、その後口を開く。
「列を作れ!」
歴戦の将校の声はたちまち先頭集団の人々の目を集めた。
「この度の移動は静かに行われなければならない。次の合図以降、一切の私語を禁じる!」
口を閉ざし、嗚咽を殺して、荷袋を抱きしめた。その中にある折りたたまれた星図と世界図、一束の占星符だけが、心の支えだった。後からついて来るという、兄の言葉を信じるしかなかった。
日没、丘陵地帯に面した東の市門が密かに開かれた。行軍一日目は、夏の夜の闇の中、無言の内に開始された。
門をくぐる時、ラプサーラは空を見上げた。凶(まが)つ星ネメスの狂おしい光点がそこにあった。
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