意味と狂人の伝説――収相におけるナエーズ――
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たちは残されると?」
ラプサーラは息を切らしなら質問を重ねる。
「誰がその人たちを守るというの!」
「同盟国タイタスから贈られたネメスの木兵隊がある」
「それで守り切れるというの? これだけの兵がいてもできない事が、木人形ごときに――」
「ラプサーラ!」
ロロノイは叫んだ。
「俺たちの役目は一人でも多くの人を生き延びさせる事なんだ。少しでも可能性を増やす事だ。このままではどのみち全員死んでしまう! グロズナの軍事組織は虐殺を躊躇わない!」
ラプサーラは泣き出しそうになり、歯を食いしばった。一人でも多くを生き残らせる。生き延びる可能性が高い人を連れて行く。ここでは人は数字でしかないのだ。
「兄さん」
嫌な予感にかられ、尋ねた。
「何人ほどがカルプセスを出るの」
「二万から二万五千になる見込みだ。内六千はセルセトの部隊だ」
「ねえ、兄さん――ちゃんとした武装をしているのはその中の何割?」
真横で民家の戸が開き、ラプサーラは飛びのいた。
「お願いだ! どうか!」
男が兵士に引き立てられ、泣きながら戸口に手を伸ばした。
「その子はあさってで十三歳になるんだ! 兵役可能年齢なら連れてってもらえるんだろ!? 頼むよ! その子を――」
通り過ぎる時、戸の向こうで、顔面蒼白になった女が呆然と立ち尽くしながら、少年の肩を抱いているのを見た。
「畜生! たった二日の違いが何だっていうんだ!」
ロロノイは質問に答えなかった。ただ黙々と行列の先頭を急ぐ。横目で見る行列には、兄の言葉の通り、怯えた顔の女性や子供も混じり始めていた。
「連れて行ってくれ!」
裏道からグロズナの男が飛び出して来て、兵士に縋りつく。
「確かに俺はグロズナだ。でもそれが何だって言うんだ? 俺が何したって言うんだよ!」
ラプサーラは耐えきれず、目を背けた。
「連れて行ってくれ! お願いだ!」
「ラプサーラ」
ロロノイが振り向いた。
「占星符は持ってきたな」
「ええ――」
兄が腕を広げた。不意に抱きしめられ、ラプサーラは声を失う。革鎧の金具が頬に当たり、冷たい。
「過酷な行軍になる。食料も兵力も全然足りてない」
無精髭の生えた顎が額に当たり、少しだけ痛かった。
「生きるんだ、ラプサーラ。それでも行け」
「兄さん――兄さんも来るのよね? そうよね?」
「俺には最後まで行列を形成する任務がある。大丈夫だ。魔術師のベリルも一緒だから――魔術師が一人いれば百人力だろ?」
兄は妹への抱擁を解き、無理矢理に笑った。
「最後尾につく。少し離れ離れになるが大丈夫だ。明日の昼には最後尾の集団も出発できる見込みだ」
「明日の昼」
呆然と言葉を返すラプサーラの手を取り、行列の先頭集団へと連れて行った。武装した治安特務隊長の姿もそ
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