意味と狂人の伝説――収相におけるナエーズ――
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「妹の態度を不敬と思われるかもしれませんが――」
ロロノイが取り成すように口を開いた。
「星占を生業とするには、色々と難しい事があるんですよ。誰だって自分自身の運命は占えませんからね。まして占いが精確であるゆえに時の権力者に取り立てられて、揚句占いの内容が気に入らないからと殺された星占は数知れない」
「私たちの両親は、私を地方貴族に差し出すよう要求され、拒んだ挙句、殺されました」
淡々と語るラプサーラに、わかった、とデルレイは応じた。
「話そう……山岳民族グロズナの情勢はわかっているだろう。ナエーズの新総督にペニェフのラナシーバという人物が選任されて以来、セルセトとペニェフに対する反発を強め、ついに独立国家の建国を宣言した」
「よく存じております。グロズナの民兵たちがペニェフの村や町に襲撃をかけている事も、ペニェフの難民たちがここカルプセスに押し寄せている事も。それによってカルプセスが困窮している事も」
「その困窮が、グロズナによる物資搬入の妨害によって引き起こされている事も?」
「はい。それにより餓死者も出始めている事も」
「何故セルセト本国がこの状態を放置しているかは?」
「王宮の王位継承問題が内戦に発展しつつあるからでしょう」
ようやく話が読めて、ラプサーラはデルレイに頷いた。
「本国内の問題が収まり、いつナエーズに本国からの救援が来るかを読めという事でしょうか?」
「その通りだ。どちらの王子が勝とうと我々には関係ない。このナエーズをどうにかしてくれるならな」
ラプサーラは再び、燃えている竜香木の幻視に意識を集中した。
「今はヘブの力が強く、ギャヴァンは隣接する糸紡ぎの神エータの星の干渉により、勢いが衰えています。しかし、衰えは一時的なものです」
半眼で星図を読み取りながら言う。
「一方、間もなくヘブを筆頭とする緋の界の星々は、敵対する灰白の界の星々と急激に接近する為、そちらに注意を削がれ力を落とすでしょう。またヘブは気性が荒く冷酷な人間を好む故、宰相の傀儡でしかない第六王子を早々に見限る可能性が高い。現に竜香木を包む火は見る間に衰えています。この戦、緋の界の星団が灰白の界の星団と接触し次第、第四王子が勝つでしょう」
「どれほどかかる」
「三月ほど」
ラプサーラは占星符をまとめ、椅子に座った。三人の客の顔は冴えなかった。理由はわかる。カルプセスには時間がないのだ。ペニェフが多数を占めるカルプセスでは、街を守るセルセトの兵士達も含めて皆が困窮している。市街においては民族の違いを理由に隣人同士が殺し合い、民間人のラプサーラの目にも、これ以上の治安維持は限界であるように見えた。加えて、市門の外にはグロズナの軍事組織が展開している。カルプセスが三月も持ちこたえるとは、ラプサ
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