修行編 その三
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を拭く。
「そう言えば、名前を言っていなかったな。
俺は関忠って言う。
君は?」
「楽進と申します。」
楽進といえば曹操の軍に出てくる武将の名前だ。
本当に奇妙な縁があるよな。
「どうしてあんな無茶な修行を?」
俺がそう聞くと、少しうつむきながら楽進は話した。
「自分の村は前に賊に襲われたことがありました。
その時は何とか撃退しましたが、何人か亡くなられたのです。
自分ともう二人友達がいるのですが、自分達で何か役に立てないかと話し合いました。」
「その結果がこの修行って訳か。」
こくり、と頷く。
少し俺と似ている気がした。
親を賊に殺され、母さんに守られてばかりだったあの頃と。
あの時は母さんや皆の役に立ちたいと常に思っていた。
そこで師匠と出会って一緒に修行をしている。
でもこの子は一人で修行している。
だから、何をすればいいのか分からないのだろう。
正直、俺も師匠みたいに修行方法とか言えないし、言えるほど強くはない。
だけど、これだけは言った。
「でも、その友達は君が傷付いてでも修行している所を見たらどう思う?」
「それは・・・・」
その後から言葉が続かない。
俺は言葉を続ける。
「君の事情も村の事情も知らない赤の他人の言葉だから、無視してくれも構わない。
でも、同じ武人を目指す者としてお節介だが助言させてもらう。
自分の身体を大事にしろ。
いざという時に、身体がボロボロで動けなかったら何のために強くなったか分からないだろ?
修行も大事だけど、自分をもっと大事にしないとな。」
「はい。
その、ありがとうございます。」
ちょっとは分かってくれたみたいで嬉しかった。
気がつくと辺りが暗くなっている事に気がついた。
結構話し込んでいたらしい。
これは今すぐ戻らないと夜までには戻れないぞ。
少し焦りながら俺は言う。
「んじゃ、そろそろ戻らないと師匠が心配しそうだ。
それじゃあな。」
俺は楽進の言葉も聞かずに森の中を走って行った。
しかし、適当に走っていたのが裏目に出たのか、道に迷ってしまった。
やっとの事で戻る頃には夜になっていて、師匠に怒られた。
その夜は師匠が採った魚だったのだが、夜までに帰って来れなかったので俺は夕食抜きにされた。
「あっ!
・・・・・行ってしまった。」
突然やってきた関忠という人は自分の言葉を聞かずに去って行った。
お礼を言いたかったのだが。
(自分を大事にしろ、か。)
今まではがむしゃらに修行していた。
だが、それは間違っていたのかもしれない。
あの人は自分の身体を大事にしろと言っていた。
大事な時に動けなかっ
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