街灯に照らされて
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然に感じられて……。
(わわわ……)
再び菊の胸が、ドキッと多きく鳴る。
(ああ、フェリシアーノさんがあのようなこと言うから……アーサーさんが笑うたびに意識してしまいますよ…)
その鼓動が聞こえないように、菊はそっと胸を抑えた。と、うつむいた先に、すっと割った半分の肉まんが差し出される。
「え……?」
「ほら」
「いいですよ。これはアーサーさんにあげたものですから、アーサーさんが食べてください」
けれどアーサーは手を引っ込めず、
「こういうときは……ありがたく受け取るんだろ?」
少し悪戯な笑みを浮かべる。そしてそれがすぐに、ふわっと優しい表情へと変化した。
「じゃあ……いただきます」
菊は唇をとがらせながらも、素直にそれを受け取った。
(反則ですって……あんな笑顔で差し出されたら……)
まだ落ち着かない胸のまま、湯気を上げる肉まんを口にする。
「おいしいですぅ……」
思わず本音がこぼれる。
星空の下、静かな住宅街を、アーサーと半分この肉まんを歩きながら頬張る。
菊の頬が自然とゆるんだ。と、こちらを数センチ上からおかしそうな顔で見てくるアーサーと目が合う。
「すごく嬉しそうな顔してるな。菊はホントに単純だよな」
「お、おいしいんですから、いいじゃないですか」
「悪いとは言ってないんだけど」
言いながらアーサーも肉まんを口にする。
「…うまいな」
(あ…また笑いました)
「やっぱりアーサーさんだって、嬉しそうな顔してましたよ?」
思わず指摘すると、アーサーは無理に真剣になろうとする。
「…そんな顔はしてないからな」
「いえ、してますって……ほら、嬉しそうです!」
「…まったく、お前は」
アーサーは少し困ったように苦笑する。が、抑えきれずに顔を赤くして頭をかいた。その視線は空に。
住宅街の電灯に照らされて、2つの影が伸びる。
(…歩調…もしかして、合わせてくれているのでしょうか…)
いつもはあのアルフレッドと並んで歩けるくらいに早歩きなアーサーなのにと、菊は少し温かい気持ちになった。
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